2月13日(木)「歌舞伎座2月昼の部、八陣守護城、羽衣、人情噺文七元結、道行故郷の初雪
歌舞伎座の二月大歌舞伎の昼の部を見る。八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)、羽衣、人情噺文七元結、道行故郷の初雪の四本。今月は、十三世片岡仁左衛門の二十七回忌追善狂言が並ぶ。昼は、菅原伝授手習鑑の通し、夜は八陣守護城を我當、道行故郷の初雪に秀太郎が主演した。父の二十七回忌に、長男の我當が病気を押して出演しているが、三兄弟が揃って追善行興行に参加できるのは、幸せなことだ。
八陣守護城は、長い物語で、出たのは湖水御座船の場。舞台に大きな船が置かれていて、琵琶湖を船が走っているてい。船の中央に我當扮する佐藤正清が座っている。加藤清正である。徳川家康から毒酒を飲まされたが、船上で元気そうに振舞っている。我當は病気療養中で、元気一杯には見えず、まもなく死にそうな雰囲気だった。加藤清正も、毒酒を呑まされて、結局死ぬのだが、我當がまもなく死んでしまうようで、少し無気味だった。我當の丸々と肥った顔立ちをしっかりと覚えているので、今は顔が痩せ、悲愴感が漂っていた。言葉に力が無く、元気に気丈に振舞っている演技ではなく、病弱な人が元気な振りをしているように見え、病は隠れ様が無かった。これが我當最後の舞台になるかもしれない。十三世仁左衛門の長男として生まれながら、松竹の営業方針で、人気と集客力のある三男孝夫が仁左衛門を襲名する事になり、仁左衛門を継ぐことができなかった我當の気持ちはどうだったのだろう。父の演じた管丞相を演じてみたかったと思う。
長唄舞踊の羽衣は、玉三郎が美しかったと言う美的感動に包まれ、うっとり感が残った。玉三郎が演じると、天女とはこういうものだという具体的なイメージが掻き立てられるから不思議だ。玉三郎が死んだら、もう演じる人が居なくなるのではないかという不安感が高まる。イヤホンガイドの解説のおかげで、漁師伯竜が膝を付いて、手を目の上に掲げ、遠くを眺めるのは、天女が天に昇るところを眺めている事だとか、漁師伯竜が舞台中央のセリからセリ下がるのは、花道にいる天女が逆に天に昇ることを意味していると分った。
人情噺文七元結は、菊五郎の長兵衛で何度も見てきたが、泣いて笑って楽しい舞台だった。
菊五郎は、突っ込む所は突っ込み、受けるときにはたっぷりと受け、楽しんで演じているようにも見え、緩急自在の演技で、安心して最後まで楽しめた。菊五郎劇団のアンサンブルの良さがでた。苔玉のお久が可憐で親孝行の娘を好演、結構女形としていけると思った。手代文七は女形の梅枝が演じたが、うりざね顔が、なかなか美形で、若衆もいけると思った。
道行故郷の初雪は、秀太郎が梅川、忠兵衛を梅玉が演じた清元舞踊。雪の中、新口村を目指す二人の道行きだ。秀太郎が、若く、艶があり、情緒たっぷりだった。