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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

近世の混沌2-ブリューゲルのバベルの塔

2020.02.25 11:34

15世紀後半からネーデルランドを含むブルゴーニュ地方には、フランドル派と呼ばれる美術ムーブメントがあった。初期代表格のヤン・ファン・エイクは、油彩技法に革命を起こし、それまでにない豊かな色彩を生みだし、ルネサンスにも影響を与えた。

その後に現れるヒエロニムス・ボスは、この色彩を自在に使って、天国や地獄の独特な空想的絵画を生みだした。ボスの絵画は現代では意味が不可解だが、当時のキリスト教的説話を独特な絵画化したもので、意味が通じていたのだろう。フェリペ2世が愛好しコレクションにしている。

そして宗教改革の混乱の時代に、ピーテル・ブリューヘル(ブリューゲル)が現れる。彼は人文主義やプロテスタントの影響を受け、人々のリアルな姿と聖書の物語を同一化した、独特の絵画を生みだしす。1563年から彼が描いたのが有名な「バベルの塔」連作である。

日本に来たのはそのうちの一点だが、塔で作業している1400人が細部まで描かれている。塔の高さを計算すると510mでワールドトレードセンター並。不吉な雲がかかっているのに誰も気がつかない。天を目指す人間の傲慢、これを「フクシマ」という題にしてもまるで今に通じるのである。