人間は青年が完成形 2020.02.26 03:51 「人間は青年で完成し、老いるに従って未完成になってゆき、死に至って無となる」(山田風太郎:『人間臨終図鑑』)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーそうかも知れないな……と思っていたら、こういう文章を読まされた。武者小路実篤が90歳になる年の文章である。 「僕は人間に生まれ、いろいろの生き方をしたが、皆いろいろの生き方をし、皆てんでんにこの世を生きたものだ。自分がこの世に生きたことは、人によって実にいろいろだが、人間には実にいい人、面白い人、面白くない人がいる。人間にはいろいろな人がいる。その内には実にいい人がいる。立派に生きた人、立派に生きられない人もいた。しかし人間には立派に生きた人もいるが、中々生きられない人もいた。人間は皆、立派に生きられるだけ生きたいものと思う。この世には立派に生きた人、立派に生きられなかった人がいる。皆立派に生きてもらいたい。皆立派に生きて、この世に立派に生きられる人は、立派に生きられるだけ生きてもらいたく思う。皆人間らしく立派に生きてもらいたい。皆立派に生きて、この世に立派に生きられる人は、立派に生きられるだけ生きてもらいたく思う。皆、人間らしく立派に生きてもらいたい」 これは上野商店街のPR誌に頼まれて書いたもの。( 月刊「うえの」1975年5月号) かの武者小路実篤がこうである。何回転したらまた先頭にもどる毀れたCDのようなもので、果ても当てもない。 こういう状態で、実篤は91歳で死んだ。 山田風太郎は関川夏央との対談でこの話柄を出してきて、「 脳髄解体」と吐き捨てている。むしろ怖い。こういうことになってしまうのだなって。相手の関川夏央が、こういうことに関して風太郎からの警句はないのかと催促して、風太郎がじゃと答える。 タイトルは「別れの日」として……─行く人、〝やれやれ〟 ─送る人、〝やれやれ〟 ( 『戦中派天才老人山田風太郎』)