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野生の体を取り戻す2 ~発酵食を見つめ直す~

2020.02.26 07:58

3回連続シリーズ「野生の体を取り戻す」の第2回をお送りします。

第1回のテーマは「一汁一菜のすすめ」でしたが、玄米や昔ながらの味噌、漬物などを食べることで体に眠っている本来の力を呼び起こす、という内容。

今回のテーマは「発酵食品を見つめ直す」です。

空気の中に、土の中に、体の中にいる「菌」との共生によって自然とのつながりをつくり、野生の力をさらに強めていきましょう。



◎発酵食のルーツを辿ってみる:北極圏の発酵文化

北極圏に住むイヌイットは、獲った海獣や鳥、魚を万年雪の中に放置し、時間を経てから取り出して、食べます。
そうすることで、すこし腐り始めた発酵状態の肉となり、タンパク質分解酵素のカテプシンが増加、アミノ酸に近いタンパク質に変わり、きわめて消化の良い状態になるのです。
この、体内酵素を無駄遣いしない方法が健康の秘訣だったのです。
 ー『「酵素の謎」 -なぜ病気を防ぎ、寿命を延ばすのか』鶴見隆史(祥伝社)



動物の肉のタンパク質は、非常に消化が難しい食べ物です。

たとえ栄養価が高くても、消化が出来なくては仕方がありません。

消化とはつまり、ある成分を分解して、その分解されたものをもとにして新たな成分を作ったりという化学反応のこと。

この化学反応を行っているのが酵素です。

酵素が発する=発酵状態にしておくことで、肉のタンパク質を分解、消化する働きを持つ酵素が生まれ、働きます。

このように、食べる前にある程度消化されたものを食べることで、体の中の酵素を無駄遣いしないですむ、という工夫がなされています。


人間の体では、主に細胞が作っている酵素が、消化をしたり、エネルギーを分配したり、骨や肉を作ったりといった生命活動をしています。

毎日体が作る酵素の量は限られています。

消化に負担がかかる暮らしを続けると、それ以外の生命活動(代謝)のための酵素が不足します。

そのため、消化に費やす酵素を節約するために、発酵食品や野草などの持つ酵素を使って、食べ物の成分を事前に分解してから食べる知恵は古い時代から受け継がれてきています。


◎発酵のルーツを辿ってみる:中国、日本列島、コウジカビ

四千年以上前の中国では「どんな食事も、発酵食品と共に取るように」と薦められ、数百種類の発酵食品が国家の公的レシピ集に残されていました。

当時の中国には「醤院」という国家機関があり、国の事業として発酵食づくりと研究が続けられてきました。

日本列島では、旧石器時代に、アワやヒエなどの穀類や、ドングリなどの木の実を原料とした酒がつくられていたそうです。

そして奈良時代には、コウジと呼ばれるカビを使った様々な種類の発酵食品を作っていました。

酒、酢、醤油、味噌などはその代表です。



◎味噌汁のことをあらためて

1945年8月9日、日本の長崎に原爆が投下された時、秋月辰一郎医師が病院長を務めていた聖フランシスコ病院は、みそや米、わかめなどの蔵でもありました。

この病院では当時、わかめのみそ汁と玄米のおにぎりを食べながら、救護や治療、復旧作業にあたるスタッフに被ばく症が出なかったといいます。

秋月医師は、自身がもともと虚弱体質であったこともあり、玄米正食や食養法の基礎を作った石塚左玄氏や、桜沢如一氏からの学びを実践していました。

そして原爆投下後も、病院のスタッフや患者に対して、みそ汁と玄米を中心にした食事による体質改善を勧めました。


以下は、秋月さんの言葉です。


厳密にいうと、味噌汁を毎日食べるから健康なのか、健康だから味噌汁が好きなのか、原因と結果の論争になるのである。
それでも、味噌汁を毎朝食べているということが、病気にかからない、病気にかかっても治り易いということと、重大な因果関係があることは信じてよいであろう。
味噌汁を食べ始めたからといって、すぐに病気に効くものではない。
副腎皮質ホルモン、抗生物質のように今すぐ効果があるものではない。
毎日欠かさず味噌汁を食べていると、体質がいつの間にか、病気に負けない体質になっているのである。
薬の効きやすい身体になっているのである。
古くから医学の先哲が養生説に説いている。
 ー『体質と食物 -健康への道』秋月辰一郎(クリエー出版)


体質が食事をつくるのか、

食事が体質をつくるのか。

にわとりが先か、卵が先か。

今は論争するより日々の食事を見直す時のような気がします。


秋月さんが日々、味噌汁とおむすびをふるまいながら働き続けていた当時、病院は米や味噌やわかめの蔵でもありました。

今、そのような病院はいくつあるでしょう。

わたしたちは今、いざという時に分け合える味噌や醤油や梅干しや梅酢や漬物を、どこに持っているのでしょう。


・・・立ち止まってよく見つめ直す時だと感じています。


・・・

サンフランシスコにある、お店のスタッフが全員オーナーになって運営しているコミュニティマーケット「レインボーグロッサリー」では、スタッフひとりひとりが仕入れにも関わり、みなで選んだものを販売しています。

そして、味噌や醤油、ねり梅などを量り売りで販売しています。

消費者と労働者と経営者の関係性そのものを変えていく様は、マーケットであり蔵でもあるような空間を作り出しています。


日々の暮らしの中に、蔵があること。

いざという時に、分け合える米、味噌、醤油、梅干しがあること。


腸内を整えるための蔵を、意識の町内に。


健やかで安心な発酵養生ソサエティを、みなさんと育んでいけたら嬉しいです。

(今回の企画担当:冨田 )



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(編集:冨田、須賀、大矢)