Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

M's tail

「またね」

2016.05.06 06:01

「人ってさ、生きる程に強くなっていくのかな?それとも弱くなっていくのかな。」


唐突に君が零した疑問は、僕に答えを求めてる訳ではなく、心の声を漏らしてしまった様だった。


どんな言葉を返しても、君にとっての正解ではない気がして、僕はただ君の独り言を静かに聞いていた。


「本当の俺の姿を見せたら、もう誰にも必要とされなくなる気がするんだ。だから演じ続けなきゃ、俺は俺じゃないんだ。」


そんな事ない、だから僕は君の隣りにいるじゃないか。…そう素直に言ってあげれば良かったのに、僕なんかが何を言っても、と。

あの時の僕は君に何かを伝えられる人間じゃなかった。そもそも僕こそ、君にとって一体何なのかが分からなかった。


ただ君はいつも忘れ物をした。

ある時は帽子、

ある時はブレスレット、

ある時はサングラス、

ある時は仕事の書類…これはダメだろ。


で「俺の忘れ物あるよな?」

「今から取りに行って良い?」

不器用で照れ屋な確信犯。


僕等の間に会う理由なんて要らなかったのに。ただお互いの存在が、語り合わなくても分かり合える空間を感じる事が、幸せだった。世界一居心地の良い、自分のままで居て許される場所。

一緒に現実逃避を散々楽しんでいた。

行く先不明のオンボロ船に乗った、

インチキで自由な海賊気取りをして、

バカみたいに毎日笑っていたんだ。


ただいつからか原因不明のまま、誤解されたり誤解したり、焦って解こうとして余計こんがらがり僕達は迷子になった。

はぐれた道で違う光や闇を知った。

それらを共有する事は困難だった。

もう別々の明日が迎えに来ていた。


君は泣きそうな顔で笑いながら、

一人で戦う未来を見据えていた。

ありがとうもさようならもなかった。


「またね。」


その一言は何よりも僕が欲しかった言葉だ。さすがの以心伝心力。

例え「また」が永遠に訪れなくても、

いつか…と信じる気持ちに救われた。

君の背中が見えなくなってから、

僕は声を上げ枯れるまで泣き果てた。


今でも思うんだ。あれからの君が、どんな道を歩いて、どう戦い、今は誰と笑っているのか、辛くなってないか。

いつだって心配でたまらないんだ。

ただ幸せでいてくれと毎晩月に祈る。


僕も何とか前を向いて歩けてるよ。


もし君の言っていた「またね」がこの道の先にあるとしたら、どんな僕達で再会をするのだろうか。

いずれにしても辿り着くのは相当な確率だけど、二人で航海していたつもりの海を見れたらいいな。あの頃に戻った様に、くだらない話しでひたすら笑い合うんだ。


離れてからも僕の心から消えない。

君といた全ての時間は消えないよ。


自分を責めずに投げ出さずいてくれ。そのままの君を必要としている人達は必ずいる。君は愛されるべき人間だ。

どんなに雑な振りをしても繊細で、感じる心を君は持っているから。

光の道から逸れても、ずっと味方だ。


君がただこの世に存在している事が、

同じ時間を過ごした思い出と絆が、いつだって僕を支えてくれている。


その日を描いて今日も生きるよ。

僕は僕のまま。君は君のまま。

財宝以上に価値のある日々だったな。

さようならと言えなくてごめん。


「またね。」

「またね。」


僕達の最強の合言葉だ。


(2014.June)