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Angler's lullaby

VINTAGE MOMENTS

2020.03.05 09:00
時々、どうでもいいようなことが気になる時がある。


最近は、「アンティーク」と「ヴィンテージ」の違いがそれだった。


まぁ、ネットで調べればすぐに出てはくるんだけど、そこまでする気も起こらず、時々思い出しては、少しの間アレコレと考えたりするくらいだった。


「よく、ルアーフィッシングの世界でもヴィンテージタックルとは言うけど、アンティークタックルなんて、聞いたことないなぁ。」


とか、


「アンティークだと、昔のヨーロッパの陶器や家具のイメージで、ヴィンテージだと楽器やGパンかな。」


くらいのレベル。


ある日、ふと思いたって検索してみた。すると、


アンティークは、「もともと、古美術や、骨董品という意味で、100年以上前の芸術的なもの」で、


ヴィンテージは、「20〜30年以上経過しているが、100年には満たないもので、主にジーンズや車、工芸品など」だそうだ。


釣り道具はどちらかと言うと、美術品や骨董品の部類じゃないし、100年以上前のモノってなると、ルアーの世界じゃ今使えるようなものは多分ほとんどないだろう。


なるほどなるほど。大体予想どおりだったけど、数字を示されると余計納得が出来るってもんだ。



先週。2月29日。解禁前夜。


もうかれこれ何年になるだろう。まあまあ長い付き合いの3人で、フィールドの近くに住んでいる友人宅に押しかけて宴会をした。


まぁ、もう、この時点で翌日の釣りはほとんどどうでも良くって、


満を持したかのように、


次々と珍しい酒が目の前に現れる。


山女魚(まだら)なんて焼酎があるなんて、今まで知りませんでした。


まだ若いのに昭和臭が濃いインテリアを好む男が住む家で、この日の僕はメインの料理担当。


この前日から釣り道具の準備よりも料理の仕込みの方が忙しく、お陰で、渓流用のリールを忘れて友人に借りるという体たらく。


前は呑んだらすぐ寝てしまうという悪いクセで今までさんざんこの人たちに叱られてきたけれど、この日は居酒屋のオヤジ状態なのでそうもいかない。


用意した料理を次から次へと出して、夕方5時過ぎから呑み始め、気が付くと終わったのが結局深夜1時。


あっという間だと思ってたけど、喰って呑んでしゃべっての8時間。みんな結構な量の食と酒と無駄話を吸収していたと思う。


四者四様。


ここまでそれぞれ、それなりに色んな人生模様を刻んできた男たち。みんな、もうそろそろパーマークは消えてなくなる時期だろう。


それでもまだこれから色々あって、そしていつかは何にもなくなるんだけど、それはみんな同じこと。


ここでしか聞けない話しも次々と出てきたりして、その都度爆笑したり、難しい顔をしたり、悪ふざけをしたり。


鱒といういかにも偏屈者が好みそうな魚が取り持つ縁は、


そろそろヴィンテージの気配が漂ってきたように思う。


翌日は先輩も合流して、釣りの合間に自分で焙煎した豆を挽いて薫り高いコーヒーを入れてくれた。


きっと今からも熟成されるであろうこんな時間。


より多くの情報をむさぼり、


より多くのものを欲しがり、


渇きを満たすことは幸せではない。


本当に欲しいものを、本当に必要なだけ持てばいい。モノだけじゃなく、人間関係も。


それが本当の幸せであり、自由だと思う。


なんだかんだの腐れ縁というご縁をもらって、友人たちと遊ぶ。


馬鹿騒ぎの後の二日酔いで、みんなロクにヤマメは釣れなかったけど、この日、そんなことは大したことじゃない。


人の記憶なんて、きっと曖昧でテキトーなものだろうけど、楽しかった思い出はそれだけで生きる糧になってくれる。


ヴィンテージという言葉自体は、元々ワイン用語。


それに年齢を表すageが掛かって、今の使い方になっているらしい。


解禁前夜、この日のことが、20年後それ相応の年齢になって、熟成されたヴィンテージワインを飲むような気持ちで語れればそれはそれでとても幸せなことだと思う。