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Crossroads 〜20歳の時、なにしてた?〜

vol.28 奥本一法さん(44) 【「なければ、自分で作ればいい」日本最大級の護身グッズ用品店 代表

2020.03.02 09:21

起業家。主に護身・防犯グッズ等の製造、輸入、販売を行う、株式会社エスエスボディーガードの代表取締役を務める。高校卒業後、プラスチックメーカーにて品質管理を経験。その後、自動車学校の講師として勤務しながら当事業を始め、二足のわらじを履きながら、8年後に法人化を果たす。



◼「学校では抜け殻みたいな感じでした」


中学二年生の時にいじめを受け、いじめっ子とたまたま同じ高校に進学した奥本さん。すっかり人間不信だった、と当時のことを振り返る奥本さんの、心の大きな支えになっていたのは、趣味だったバイクとマイコンだった。休みの日には、趣味仲間とバイクで少しばかり郊外に出かけ、当時は自分でプログラムを組まないと動かすこともできなかったマイコンを独学で学びながら始めた。


「パソコンの電源をつけると、真っ黒な画面にピコンッと記号が一つ出てくるんです。そこからは自分で動かしていかなきゃいけないんです。今じゃ考えられないでしょ。(笑)」


高校卒業後には、民間の自動車関連のプラスチックメーカーに就職した。

「父が公務員で、安定しているからと公務員への就職を勧められましたが、断固反対でした。

コネを使って入社することもできたけれど、親の七光りと言われるのも嫌だし、長い人生一つの組織に所属し続けたいとは思わなかったんです。自由に、やりたいことをやっていくために、副業や起業も当初から考えていました。」


◼転機は24歳の時。護身に惹かれて


5年ほど働いたのち、学生時代から乗り物の運転が大好きだったこともあり、自動車学校の教習指導員資格を取り、教習指導員に転向。この24歳の時期は奥本さんの大きな転機となった。

教官として働く傍ら、個人事業主として開業手続きを行い、護身用品のネットショップを立ち上げたのだ。


実は、高校時代、いじめっ子たちに対抗する術を身につけるために、少林寺拳法を習っていた奥本さん。正義の味方に憧れており、「護身」というキーワードに昔から興味があった。

「護身術は何年も習っているけれど、いざという時に犯罪者に太刀打ちできるかというと、難しい。特に女性はどうしても力で勝てないと思っていました。でも、護身用品を身につけていれば、それが誰かの人生を救うかもしれない。ただ実は日本に護身用品店は一つもなかったんですよ。」

なければ作ればいい。単純なようで、非常に勇気がいる決断を24歳の時にした奥本さん。


そこから本業と自分の事業、二つのわらじを履く生活が始まった。残業は当たり前で、12時間働いて、その後家に帰り作業し、3時間寝て会社に行く、そんな日々が続いたそう。

「自分のやりたいことをやっていたので、全然辛くなかったよ。」そう笑って話す奥本さん。

当時インターネットのサイトを個人で作ること自体が珍しく、そのための教本もほとんど存在しない。そんな状況の中、独学でHTMLを学び、ショップを立ち上げた。


◼2008年秋葉原通り魔事件をきっかけに


「二足のわらじ」を履いた生活を約8年もの間続けた奥本さん。32歳になったタイミングで 

「護身」の必要性を身にしみて感じる出来事があった。

2008年に起こった秋葉原通り魔事件だ。事件の後、テレビの報道を見た多くの人から問い合わせがあり、護身用品の注文が相次いだのだ。

「この凄惨な事件をきっかけに、多くの人が護身に興味を持つようになったんです。日本で唯一の護身専門店としての誇りを感じたと共に、日本人の防犯意識向上により一層貢献していきたいなと思うようになりました。」

すでに当初、本業の売り上げを上回っていた奥本さんの事業。この事件をきっかけに、法人化をし、株式会社エスエスボディーガード代表取締役に就任した。

https://www.ssbodyguard.jp/

大好きだった自動車学校での職務に終始点を打ち、すべてのエネルギーを「日本に護身を広めていく」ことに注ぐきっかけとなる。


◼オリジナリティを強みに、日本での展開を狙う


法人化をしてから、本気度が変わっていったと話す奥本さん。一人で立ち上げた事業は、今では19名もの社員を抱える企業になった。

「通常輸入品が多い護身用品ですが、国内のお客様に使っていただく際に安全面などで問題があったりします。なので私たちは、お客様の声を元に自社で開発をすることも多いんですよ。」


オリジナリティを強みに、社員を牽引する奥本さん。今まで事業を行う中で大変なことはなかったのだろうか。

「大変だったことはないですね。普通の人が”壁”と感じるところをそう思わない。ポジティブな性格だからかもしれないです(笑) 社員が増えてきましたが、彼ら全員に高いモチベーションを持って仕事をしてもらうよう押し付けないようにしています。」


「ハロウィンイベントとして、10月31日は仮装をして仕事をするということを毎年恒例にしていたのですが、この間ふと社員はどのように思っているのか気になってアンケートをしてみたら、社員のほとんどが反対、で(笑)。働く目的は皆違って当たり前。押し付けたらいけないな、と反省しました。」

ただ、会社である以上、社員は同じ方向を向いて仕事をしている必要がある。そのために奥本さんが重要にしているのは、ビジョンを示すことだ。

今年は、「日本での展開をさらに加速させる」というビジョンを掲げており、実際に新宿でのアンテナショップが2020年2月にオープンする。


◼コンビニで護身用品が手に入る世の中を作りたい


「事件にあってからじゃ遅いです。人生をまるきり奪われてしまうかもしれない犯罪から身を守るために、防犯意識を日本で広めていきたいです。いつかコンビニで、当たり前に護身用品が購入できるできるような世の中になったら嬉しいなあ。」

高校卒業後すぐに働き始めた奥本さん。今は経営の知識を体系的に学ぶことにも力を入れている。

奪われない財産として知識を身につけるため、現在大学の通信講座に通う3年生でもある。



◼これまでの人生は98点。言霊を大切に。


「98点!結構高い方でしょ?今はやりたいことを叶えているし、大学に通うこととか、これまでやりたかったけど、できなかったことを叶えられているからです。」

残りの2点分は、学生時代、家族や友達など周りの人を大切にできなかったことからの後悔だと話す。

最後に、20歳の人へのメッセージをいただいた。

「言霊を大切にしてほしい。なりたいことややってみたいことを積極的に口に出していくことです。口に出すと実現しようという想いが湧いてくるし、その先に予期せぬ協力者や応援してくれる人が現れてくれることもあるかもしれない。なりたいイメージをどんどん信じて口に出してみてください!」