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演劇集団 東京直角街

徳、積めず。

2020.03.03 11:27

日中、自転車で路地を走っていた。

向かいから歩いてきたおばあさんが小銭を落として、でもそのまま気づかず通り過ぎようとしていた。

多分100円玉だろうな。

色と大きさ的に。

拾ってあげようと思ってブレーキをかけた。

そうしたら、知らない間に後ろから自転車が来ていて、その自転車は僕の自転車をよけて危うく転びそうになってしまった。

事故にはならなかったが、「なんだし」みたいな顔をして自転車は去っていった。

すいません。


困ったのはその様子をおばあさんに見られてしまったことだ。

でもしょうがない。

100円玉を拾って渡しに行く。

おばあさんは、「うわ、こっちきたよこの子」みたいな顔をしている。

まあ、おばあさんにとっては急ブレーキをかけて後ろの自転車を危ない目に遭わせた奴だもんなあ。

でも後には引けないので「お母さんこれ落としてたよ」と100円玉を渡す。

危ない奴だと思ったらいい奴だったことが判明したので、おばあさんはなんとも言えない変な顔になっていた。

「あらーどうもね」と一応お礼を言われる。

なんか戸惑ったままだったな、おばあさん。

感謝よりも戸惑いが勝っていた。

うーん。

いいことをするのは難しい。

再び自転車を漕ぎ出しながら考える。



…そうか!



おばあさんが100円玉を落とした瞬間、僕は、拾ってあげようという気持ちに加えて、もしかしたら「あら優しいのね。あげるわそれ」と、お駄賃としてくれるかもしれないという邪心もよぎってしまっていた。

それがあったからバチが当たったんだ。

なるほどなあ。

いいことをする時は見返りを何も期待せずにやらないといけないんだな。

でも「見返りは期待しないぞ」と思おうとする時点で、期待してるってことだもんなあ。


聖人への道のりはまだ果てしなく遠い。


この辺で擱筆。

写真は「ふたりならんですましがお」