電気工事士が唯一のプライドだった悪徳業者に出会った件
ある会社の経営者の方が新しく工場を買い取って高圧で電気を引き込もうとしたことがありました。その経営者は電気業界に知り合いがいなかったようでネットで中古キュービクルを購入し電気を使用する予定でした。
キュービクルの相場や電気工事の相場を全然知らなかったらしく、新品でもそんな金額はしないような中古キュービクルを購入し、工事もその業者に任せていました。
そろそろ営業を開始したいと考えていた経営者は、その中古キュービクル業者に北海道電力から受電してもらえるように手続きをしてほしいと依頼したのですが、その業者は手続きの仕方をしらず、さらに大阪の業者だったため何度も北海道へ行くのは難しいからと工事を全然進めてくれませんでした。
困った経営者は、受電してから契約予定だった電気保安協会へ連絡し助けを求めたのですが、中古キュービクルの現物を見た担当者は、リスクが高いと判断した為契約できない旨を伝え帰られたそうです。
その後回り回って私のところに話が舞い込んできました。
「とにかく何とか受電してほしい」
というのが経営者の要望でした。
高い金額を払い中古キュービクルだけが屋内に放置されている状態で、この後どうすればよいか途方に暮れていたようです。
何とかしてあげたいと思い、まず中古キュービクル業者へ連絡し経緯の確認と今後どうするつもりかをヒアリングしました。その結果次のような言い分が返ってきました。
1 北海道電力に電気使用申込をしようとしたが受け付けてくれなかった。工事が出来ないのは北海道電力のせいだ。
2 会社が大阪にあるため、簡単に北海道にはいけない。次行くときは受電するときに行きたいから申込みとかよろしく・・・
話を聞いた瞬間から「あ~経営者さんだまされたのね~」と思いながら電話を切り、次どうするかを考えました。
まず何故北海道電力が申込みを受け付けてくれないのか不思議でした。そこで北海道電力に確認し申込みを受け付けてくれない理由を聞いたところ。次のような理由でした。
北海道電力と契約する場合、審査があり次のような手順で進める必要があります。
大阪の業者であった中古キュービクル業者は、この仕組みをしらず、直接北海道電力に申込もうとした結果、「登録してください」と受付を拒否されたようです。
地元の電気工事業者に間に入ってもらい申し込めばよいのですが、中古キュービクルだったこと、中古キュービクル業者が話にならないことを理由に断られたようです。
この中古キュービクル業者の言い分は、
「私は国家資格の第一種電気工事士を持っている、工事は出来るのだから北海道電力が受け付けないのはおかしい、大阪ではこんなことはなかった。北海道電力がおかしいのだ!」
でした。
心の中で、「ここは北海道だよ!契約と第一種電気工事士は関係ないよ!」と思いながら話半分に愚痴を聞いて「こっちで書類作るからハンコ押して返してくださいね~」と伝えて電話を切りました。
最終的には、工事についての責任を取らないことを前提に地元の工事業者に施工してもらい工事を終わらせることが出来ました。
こんな幼稚な電気工事業者もいるのだなと認識でき、自分的には良かった経験だと思います。電気工事士は電気工事の法規や実技の初歩を勉強する手段としてはとても良い資格だと思います。しかし、その免許を取ったことで変なプライドを付けてしまい自分の仕事のできなさを隠すために使用してしまっては資格の意味がありません。実際の電気工事の現場では、資格試験に出てくる内容はほとんど使用されていないので、取得後に日々習得していかなければこの様な幼稚な工事業者になってしまうのだと思います。
電気工事士は4万人不足するとの発表がされています。電気工事士が不足している理由に、工業高校の電気科卒でもそもそも電気工事士を目指す人が少ないという理由があります。原因は給料の安さと仕事内容の地味さだと思っています。給料が安い理由は、地元の電気工事業者の請負金額が安すぎること。工事の単価が建築土木業者に比べると安いことがあります。すでに下がってしまった単価を高くすることは出来ないので、新しい電気工事の形(経営者の利益が増える電気工事)を作らなければ単価を上げることは難しいでしょう。あと電力会社に勤めていたらスマートなイメージを取られるけど、電気工事業者に努めていると現場で汗だらだら流して大変な職業だと思われがちです。実際汗はかきますが、やり方や工夫次第でスマートな職業になれるはずです。現在若い電気工事士は重宝されます。仕事を覚え一人で現場を持てるようになれば1件数百万・数千万の工事を何件も請け負い大儲けもできる仕事でもあります。電気管理技術者である私も技術があり話の分かる若い電気工事士を探しています。もしも興味がある人は電気工事という仕事を選んでみてはどうでしょうか。