黒猫のTango(タンゴ)の話
2020.03.06 05:30
愛猫ひなた&Tango
車通りの多い休日。
対向車のトラックが不自然に車線をはみ出してきた。
運転手の主人が
ほんの一瞬隙間から
子猫がぴょんぴょんジャンプしているのを見つけた。
トラックはその子を避けたんだ。
今にも道路に飛び出さんばかりの命を心配し、
夫婦揃ってUターン。
すると別の誰かの掌に掬い上げられている子猫を確認した。
主人は安堵し、別の道から帰宅しようとした。
「話を聞いてみたいから戻ってほしい。」
と私が頼んだ。
戻るとすでに子猫は元の場所に戻されて
また道路に飛び出しそうになっている。
その子猫を主人が両手で救い上げ
今度こそ、安全な場所に避難させた。
子猫を手離した見ず知らずの男女は
「近所の人に事情を聞いてみようと思って。
子猫の目の状態も酷いし。」
と言った。
おそらくその見知らぬ男女は
あきらかに酷い目の病気を患ったちいさな命を
どう扱ったらいいのかわからなかったのだろう。
その後その男女がどう行動したのかは知らない。
目の前のちいさな命を布でくるみ
助手席で抱いていた。
「病院に連れていく。」
と言い張る私に
主人がちいさなため息をつくのが聞こえた。
これから鰻を食べに行く予定だったからだ。
「黒猫のタンゴだなぁ。」
主人がぽつりと言った。
その瞬間、
「この子はタンゴ。」
そう私の中で決まったようだ。
家族3人(匹)で
車に乗った最初の日。
忘れられない日。
黒猫のTango(タンゴ)の話。