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妙子をかえすね

2020.03.07 15:20


 今日もまた、ここにきていた


同じようなショーウィンドウつきのレンガづくりのたてものが、音もなくサークル状にならんでいる。


風もなく、あつくも寒くもなく、ただあるのはわたしと、そして少女だけだった。

 

 その少女は、夢をみるといつもあらわれた。

同じ場所に、同じ服をきて、なんとなしに、

けれど確実な存在感をはなって、そこにいた。


「なまえ、なんていうの」


あまりこわいとは思わなかった。

実際、何年も前から互いに知っていたような空気をともにまとっていた。


「妙子」

「それ、かりてもいい?」


こんなやりとりを、たぶん何回もした。

でも、返事はやはりおぼえていなかった。

思い出すまえに夢からさめた。

いつか取り返しにこないかとひやひやして、いたとおもう。しばらくは。


 それから3年が経ち、またこの夢を見た。

しばらく見なかった夢だ。

目をつむり眠ったかと思えばまた目が覚めて、そしてここにいる。レンガづくりのたてもの、サークル状、そして 少女

妙子。


「なまえを……返しにきたんだとおもう」


なんで疑問形?とおもったけど、少女はなにもいわないから、これでよしとした。

ながいながい旅がおわった。さいしょから、スタートもゴールもなかった旅だ。

わたしはもう、妙子ではない。