呼吸のはなし(鼻呼吸と口呼吸)
管楽器をやっていると様々なところで呼吸に関する話題を耳にします。
そんな中、よく聞こえてくるひとつが「鼻呼吸」と「口呼吸」について。
まるで「きのこたけのこ戦争」のように、やれ鼻で呼吸だの口で呼吸だと言っているのも見かけたことがありますが、いや、そうじゃないと思うのです。
先にすべきことは人間の体の構造や働きを理解することであり、鼻腔と口腔は通常、軟口蓋部分で繋がっているということが理解できていれば、おのずと両方を利用することが当然であるとすぐにわかるはずです。
(出典:http://emec.gumitec.com/swallow/02.html)
経験則ですが、やたらと鼻呼吸を推奨している方は、呼吸に対してヨガや太極拳など、ゆったりとした行為のイメージが強いのかもしれません。大量の空気を勢いよく吸引することをさせないよう、自然に流れ込む状態を求めて(伝えるために)そう言っているのかな、と。
もしそうであるならば一理あります。
ただ、鼻の穴は口腔に比べて狭いために、一度に流せる量には限界があることから、曲中の瞬間的なブレスなどではその方法は難しく、そもそも両方の鼻が常に貫通していることは考えにくく(特に今の季節は!)、聞いた話ですが人間の鼻の穴はどちから一方が貫通している状態を交互に繰り返しているらしいので、やはり鼻だけの吸気は非常にリスクが高いと考えています。
また、口を開けない呼吸では、セッティングルーティンに影響が出てしまうことが考えられます。勢いよく(強く)鼻で吸引しようとすると、どうしても鼻を「すする」運動に近づいてしまい、嚥下(ものを飲み込む食事時の運動)の状態に切り替わるため、気管(声帯)が閉じてしまうのです。ですから、人間の体にそなわっている機能を自然にかつ十分に活用するならば、やはりどちらか一方を使うなどと無理に考えず、そのまま鼻も口も空いていたほうが良いのです。
ちなみにあくびをしている時、口が大きく開くので見た目は「口呼吸」と思うかもしれませんが、鼻腔からも確実に流れていますから、そうした視覚的な印象だけで呼吸についてあれこれ話題にするのも避けるべきです。都市伝説が発生する要因のひとつです。
呼吸に関しては本当にいろいろ不思議なことを言う人が多いな、と感じています。そもそも呼吸とは何なのか、呼吸の運動はどのようにして行われているのか、人間に備わっている吸気の正しい仕組みを理解すれば、それがなんとシンプルなものなのかがわかると思います。
こういった話は過去にトランペットのブログにいろいろ書いています。よろしければぜひそちらもご覧ください。
↑こちらは「ラッパの吹き方:Re」というブログに掲載している記事ですが、呼吸に関して6つの記事に分けて書いております。
以下のリンクは有料記事ですが実践的なところまでより深く解説しています。
荻原明(おぎわらあきら)