『私の個人主義』by夏目漱石
2020.03.09 00:42
夏目漱石が亡くなったのは49歳。自分の今の年齢なのかと途方にくれる。
学生時代に読んだ『私の個人主義』あらためて読んでみた。
『私の個人主義』夏目漱石
第一に自己の個性の発展を仕遂げようと思うならば、同時に他人の個性も尊重しなければならないという事。
第二に自己の所有している権力を使用しようと思うならば、それに附随している義務というものを心得なければならないという事。
第三に自己の金力を示そうと願うなら、それに伴なう責任を重んじなければならないという事。
つまりこの三カ条に帰着するのであります。 これをほかの言葉で言い直すと、いやしくも倫理的に、ある程度の修養を積んだ人でなければ、個性を発展する価値もなし、権力を使う価値もなし、また金力を使う価値もないという事になるのです。
それをもう一遍云い換かえると、この三者を自由に享け楽しむためには、その三つのものの背後にあるべき人格の支配を受ける必要が起って来るというのです。
もし人格のないものがむやみに個性を発展しようとすると、他を妨害する、権力を用いようとすると、濫用に流れる、金力を使おうとすれば、社会の腐敗をもたらす。ずいぶん危険な現象を呈するに至るのです。