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#齋藤和紀 #シンギュラリティビジネス 勝ち残るか!?

2020.03.09 23:14

「 自分サイズが見つかる進化系ライフマガジン 幻冬舎plus 」様よりシェア、掲載。ありがとうございます。感謝です。


2017.06.06 齋藤和紀『シンギュラリティ・ビジネス AI時代に勝ち残る企業と人の条件』


「AIが人類を超える」どころじゃない! こんなに凄い「シンギュラリティ」の衝撃


 シンギュラリティという言葉をご存じですか。聞いたことはあるけど、「いったい何?」と思っているかたがほとんどかもしれません。

 News Picks編集長・佐々木紀彦さんも「AI入門の決定版だ」とお薦めの『シンギュラリティ・ビジネス――AI時代に勝ち残る企業と人の条件』。著者の齋藤和紀さんが、これからの社会を考えるうえで欠かせない、AIに並ぶ大注目のキーワード「シンギュラリティ」について解説します。


孫正義氏、社長続投の理由は「シンギュラリティ」だった!

 未来を変えるテクノロジーとして、いまもっとも多くの人々が注目しているのは、お

そらくAI(人工知能)だろうと思います。それと同時に、あるキーワードがメディアでクローズアップされるようになりました。それは、「シンギュラリティ」という言葉です。

 この言葉が日本国内で広まるきっかけをつくった一人は、ソフトバンクCEOの孫正義氏ではないでしょうか。孫氏は、2016年6月、AIの進化について熱弁をふるい、「シンギュラリティがやってくる中で、もう少しやり残したことがあるという欲が出てきた」と、シンギュラリティが社長続投の理由であったと発言したのです。それ以来、数年前まではごく一部の人たちしか知らなかった「シンギュラリティ」という言葉が一般に注目されるようになりました。

 しかし私の見るかぎり、「シンギュラリティ」という言葉は必ずしも正しく理解され

ていません。多くの日本人が誤解しているようなので、まずはその正確な意味をお伝え

するところから始めましょう。

 シンギュラリティは、もともと「特異点」を意味する言葉です。数学や物理学の世界でよく使われる概念です。たとえば宇宙物理学の分野では、ブラックホールの中に、理論的な計算では重力の大きさが無限大になる「特異点」があると考えられ、それが重大な問題になります。もちろん、孫正義氏が「見てみたい」といったシンギュラリティは、ブラックホールとはまったく関係がありません。こちらはただの特異点ではなく、正式には「技術的特異点(テクノロジカル・シンギュラリティ)」といいます。それがいまは、単に「シンギュラリティ」といえば、この技術的特異点のことを意味するようになりました。

 この狭義の「シンギュラリティ」という概念が定着したのは、米国の発明家であり未来学者、AIの世界的権威であるレイ・カーツワイルが2005年に発表した著作が発端です。著作のタイトルは『The Singularity is Near』。日本では2007年に『ポスト・ヒューマン誕生』というタイトルで、また2016年にはエッセンス版が『シンギュラリティは近い』というタイトルで、いずれもNHK出版より刊行されています。

 カーツワイルは天才の中の天才ともいうべき人物で、持っている博士号の数は20以上。2012年からは、グーグル社でAI開発の技術責任者を務めています。過去に3人の米国大統領からホワイトハウスに招聘(しょうへい)されたほどですから、米国社会では絶大な信頼と尊敬を得ているといえます。

 カーツワイルは著作のなかで、ある予言をしています。それは、「技術的特異点」と呼ばれる現象が、2045年に起きるということ。これこそが、孫氏が「見たい」といったシンギュラリティにほかなりません。

 日本では、カーツワイルの予言したシンギュラリティのことを「AIが人類の頭脳を追い越すポイント」だと理解している人が少なくありません。コンピュータ技術の専門家でも、そのように説明している人がいます。しかし、そうだとすると、何をもって「AIが人間を抜いた」というのかよくわかりません。たとえば「アルファ碁」の活躍に見るように、囲碁という分野で見れば、AIは既に人間を抜いたと言うこともできます。

 またコンピュータと人間の知能を比較する「チューリング・テスト」というテストがあるのですが、カーツワイルは、2020年代の前半にはAIがこのテストに合格すると予測しています。「AIが人間を超える」というのはかなりの確度で近い将来に起こると予測される事象であり、少なくともカーツワイルのいうシンギュラリティはそれとは別の話だということになります。

 では、カーツワイルのいうシンギュラリティとは何なのでしょうか。カーツワイルは2045年に何が起こると予言したのでしょうか。


「倍々ゲーム」=「エクスポネンシャル」のとてつもないパワー

 先ほど触れたブラックホールの「特異点」は、計算上、重力が無限大になるポイントのことでした。それと同様、こちらの「技術的特異点」も、あるものが無限大になると予測されています。それは、技術が進歩する速度です。しかもカーツワイルは、そのスピードが「倍々」のペースで加速すると考えました。

 倍々のペースで物事が増えることの勢いは、手元にある紙を折ってみるだけで実感できます。試しに、そのへんにあるコピー用紙などを二つ折りにしてみてください。それをさらに二つ折りにし、また二つ折りに……とくり返した場合、何回まで折れるでしょうか。よほどの怪力の持ち主でも、8回が限界だと思います。厚さ0.1ミリメートルの紙が、その段階で辞書並みの厚さになっているからです。理論的には、51回折ると、その厚さは地球から太陽までの距離と同じになります。「倍々ペースの増加」には、とてつもないパワーが秘められているのです。


指数関数のことを、英語では「exponential function」といいます。「エクスポネンシャル」も、社会の未来を語る上での重要ワードです。

 カーツワイルは、人類のテクノロジー全体が、エクスポネンシャルに進化すると考えました。AIをはじめとするコンピュータ技術だけでなく、生命科学やナノテクノロジー、ロボット工学など、あらゆる分野の科学技術がエクスポネンシャルに進化した結果、それらの科学技術が自ら、自身より優れた科学技術をつくり出すポイントが訪れます

 そのときいったい、何が起こるのか。

 あらためて、指数関数のグラフを見てみましょう。倍々ゲームで上昇が加速していくと、やがてその方向が横軸に対してほぼ垂直になることがわかるでしょう。それは、進化のスピードが「無限大」になるということです。そしてそのポイントは、それまでの進歩の継続性を断ち切るように、突然に起こります。そのポイントこそがカーツワイルのいう技術的特異点、シンギュラリティにほかなりません。

これからの10年は、人類史上、前例のない激変期

 これは、これまで人類が経験してきた時系列とは非連続の進化です。カーツワイル自身も、シンギュラリティのインパクトがどんなものになるのかは「予測できない」と告白しています。ただしカーツワイルは、それが「人間の能力が根底から覆り変容する」レベルの現象になると述べています。いわば、「人類が生物を超越するレベル」です。地球上の生物は40億年かけて進化してきましたが、シンギュラリティによって、その進化がこれまでの時系列から解き放たれ、無限に増殖を始める。人間のつくり出した科学技術が、人間の手を離れて自らより優れた科学技術をつくり出すようになる――。

 カーツワイルの予測を懐疑的に見る人々もいます。とくにAIに精通した人ほど、その難しさを日常的に肌で感じているせいなのか、「そんなにうまくいくはずがない」と考える傾向が強いようです。

 しかし、この時代に生きる私たちにとって大事なのは、シンギュラリティが起こるか否かではないと私は思います。進化スピードが無限大になる特異点が実現するかどうかはともかく、そこへ向かってテクノロジーがエクスポネンシャルに発展していくことは間違いありません。

 というのも、エクスポネンシャルな進化を遂げるのは、人類のテクノロジーだけではないからです。カーツワイルによれば、そもそも生命進化のプロセスも、この倍々ゲームの法則で加速してきました。

 2020年代にはコンピュータの集積度が人間の脳を超えることはほぼ間違いないであろうと予見されています。日本のスーパーコンピュータ開発の第一人者である齊藤元章氏は、

『エクサスケールの衝撃』(PHP研究所)という著書の中で、そのポイントのことを「プレ・シンギュラリティ(前特異点)」と呼んでいます。

 2045年のシンギュラリティを待たずとも、確実に起こるであろうこのプレ・シンギュラリティは人類のあり方を大きく変えることになるでしょう。その意味では、シンギュラリティを「AIが人間の知能を超えるポイント」とする解釈も、そう大きく間違っているわけではありません。齊藤氏も、これから10~20年のうちに、過去の人類が何千年ものあいだに経験したよりも多くの歴史的変革が起きると語っています。

 カーツワイルのいうとおり、シンギュラリティが「人間の能力が根底から覆り変容」し、「人類が生物を超越する」ようなレベルの大事件だとすれば、いま地球上で生きている私たちはもしかしたら「最後の現生人類」になるのかもしれません。そんなふうに思うと、私はこれから起こる変化に胸が躍るような気分になります。人類史上、こんなにエキサイティングな面白い時代はありません。

 もちろん、そのような激変に不安を抱く人も多いでしょう。私の中にも、それがまったくないといったら、うそになります。企業でビジネスに取り組んでいる人、これから進路を決めようとしている若い世代、子供の教育に頭を悩ませている親世代など、どんな立場であっても、未来のあり方によって現在の生き方や物事の考え方は変わってきます。

 プレ・シンギュラリティまで、あと十数年。本格的なシンギュラリティまでは、あと

約30年。