TEAM S
目が覚めたら、そこに涙目のトキロックがいた。
その涙の出具合と表情から手術は成功したんだなと思った。
カメラを向けられ何故だかわからないが、ふいに敬礼をした。
”恥ずかしくはないが還って参りました"
その3時間程前、僕は手術室に向かうストレッチャーの上にいた。
手術開始時間は予定より基本遅れると思っていて下さいと朝言われていた。
が、そう思ってトキロックと談笑している最中に完全なオンタイムで準備してくださいと
看護師さんがやってきたのでふいをつかれた。
あれよあれよとストレッチャーに乗り換え、手術室に向かえたことはしても仕方ない緊張をする隙を与えられず、流れる天井とトキロックと看護師さんの下顎を見ながらこれ映画やドラマでよく見るやつだと心が踊った。
そうこうしているうちに手術室に入り、今回担当のS先生のチームに引き渡された。
右側から黒縁に所々金色でアクセントを施してある主張の強い丸メガネガールの顔が中々の速さで近づいてきてこのままマスク越しにキスされるのではと胸が高鳴ったが、目前で止まり「〇〇のIです。ギガさん宜しくお願いします〜!」と挨拶され、間髪入れず左側から特徴に欠けるボーイが顔は近づけず「〇〇のIです。」と挨拶された。開始早々頭文字 I に挟まれたことから愛に囲まれこれは幸先いいなとくだらないことを思った。
手術室は近代化甚だしく、これから宇宙に行くのか?と思えるほどのモニターとテクノロジーを感じさせる仰々しい機器に囲まれていた。
それに相反するかのようにチームS(なんだかんだ10数人いたように思う)は大学の緩めのサークル(大学行ってないので勝手なイメージであるが)もしくは、髪型自由ピアスOKの居酒屋のようなノリがあり、携帯が鳴ったりして「誰か携帯なってるよ〜」「わりーわりー オレオレ」みたいな会話がなされたり、S先生が麻酔の量を最初いくつからいって最後いくつでみたいな数値を麻酔担当らしきボーイに言うのだが、ボーイが全然覚えれず「いくつでしたっけ?」とか言って別の担当のガールが「いくつといくつだよ〜 もう 私の方が覚えてんじゃん」
あははは〜(笑)みたいな感じなのである。おいおいチームS こんな感じで大丈夫なのか?と不安になりかけたが、もしや敢えてこういう空気にすることでこの手術は大したことなくて楽勝なんだよということを暗にアピールし僕を安心させようとしてるのかもしれないという結論に瞬時に辿り着くことで逆に安心した。手術着が解かれ、手術用パンツも解かれ、僕の貧弱な身体を若きチームSに託し目を瞑った。血管に麻酔が入ってくる感覚を少し味わったのちに和やかに意識が遠のいていく数秒はとても気持ちが良かったとこまで覚えている。
僕の心臓が小さかった事で焼く範囲が少なく手術が早く終わったこと、興に乗ったTEAM Sが今後悪い電気信号を受け入れてしまう可能性がありそうな右心房の何箇所かもついでにやっといたよということを後でトキロックから聞いた。
きっとスラムダンクの山王みたいなチームだったんだろうなと、ありがとう常勝軍団。多分。
gigadylan