南留別志206
2020.03.12 09:08
荻生徂徠著『南留別志』206
一 はたち、みそぢ、よそぢなど、とし(年)を「ち」といふなり。かへしなり。「はた」は「ふ」の転ぜるなり。
[解説]「ち」は現在の文法でいう助数詞で、「個」の意。単に数をかぞえる場合は「ひとつ」「ふたつ」と助数詞「つ」がつくが、年齢の場合は「ち」となり、二十歳から上、十歳ごとに「はたち」「みそぢ」となる。これを徂徠は「かへし」(返し)と説明している。更に、「はたち」はもともと「ふたち」で、「ふ」が同じは行の「は」に転じたとする。文法が先にあって、言葉がそれに従って作られたり変化したのなら、すべて合理的に説明がつくのだろうが、言葉が先にあり、時代や地域、世代、属性などでさまざまに発達、変化した。それを後から文法として説明しようとするのだから、中には説明がつかないものもある。「はたち」の「はた」は「二」、「ち」は「十」である、といった説や、両手両足の指を使って数えた場合、二十で終わることから、「果てつ」が「はたち」になったという説などもある。