「ABC-Buch」Robert Reinick Ferdinand Hiller
先日、イーダ・ボハッタのドイツ語の展覧会図録を紹介した際に、その中に紹介されている本として少し名前を挙げさせていただいたのがこの「ABC-Buch」(Robert Reinick/Ferdinand Hiller)でした。
こちらは1978年にドイツ/ドルトムントの出版社が「Die bibliophilen Taschenbucher」シリーズの一冊として復刻されたものですが、オリジナルは1876年に出版されたものです。(この1876年版も完全なオリジナルと言うことではなく、この復刻版の元になったヴァージョンという事だそうです。本来のオリジナルは1845年です)
19世紀にはこうしたABCブックは、子どものための本としてとても人気を集めていましたが、本書はその中でも特に歴史的な評価が高いものです。
それぞれのアルファベットは物語や歌と関連付けられ説明され、美しいイラストともにページをめくる子どもたちを楽しませたのでした。
この絵を描いているは、Ludwig Richter、Ernst Rietschel、Eduard bendemannと当時の著名な画家、芸術家たちが参加しています。
19世紀中頃のドイツではミュンヘン一枚絵と言う表現形態が人気を博し多くの作品が作られていましたが、このABC-Buchではそうした表現はあまり見られ無いというのも興味深いですね。
この頃のドイツの子どものための本は、芸術的なレベルがとても高く、後のイギリスやフランスの、子どもの本を作るアーティストたちに大きな影響を与えました。
ウォルター・クレイン、ブーテ・ド・モンヴェル、ジビュレ・フォン・オルファース、イーダ・ボハッタ、時代はさらに下ってモーリス・センダックなどなど。直接的、間接的に、影響を受けていない作家なんていないかも知れません。
19世紀のクラシックな絵本の形/表現を是非ご覧ください。
復刻版なのでお値段も買いやすい価格なのもオススメです。
「Die bibliophilen Taschenbucher」のシリーズはこちらです。