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演劇集団 東京直角街

「最初と最後だけ引用小説」(仮)第1弾

2020.03.16 12:44

国境の長いトンネルを抜けると、「アリクイ」と呼ばれることに嫌気がさしたアリクイが、他の虫を無理矢理食べていた。


だが、其奴は、通りがかりの者たちに「アリではないものを食べるアリクイ」と呼ばれてしまい、結局自分はアリクイという名前から抜け出せないのだと、憂いのある笑った顔をしていた。


笑った顔でも、口は長いままである。


暫く虫を食べたのち、自分の容姿を変えればアリクイからの脱却を図れると思った其奴は、何かを身に纏うことを考える。


この町にある洋服屋らしきものは、大通り沿いにある「ファッションセンターしまむら」だけのようである。


そんな世俗的なものは自分には似つかわしくないと思いながらも、仕方なく、其奴は、毛糸のコートを買おうとした。


しかし、レジスターの横に立っている店の女に「アリクイに着せる服はありません」と嘲笑とともに言い放たれ、其奴は服を手に入れることが出来なかった。


なぜ自分はアリクイなのだろう。


雪の積もった地面に、足は冷たい。


其奴は泣きそうになった。


泣きそうな顔でも、口は長いままである。


ふと、其奴は、自分の足元に小さな鳥居が立っているのに気づいた。


そして、ふと、この忌々しい現世ごと、無くなってしまえばよいのに、とよぎった。


目を瞑り、こんな哀しい世界は無くなってしまえ、と念じる。


念じ終わったのち、其奴は喫驚する。


目を上げた途端、さあと音を立てて天の河がしまむらの中へ流れ落ちるようであった。

写真は「其奴」