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増田勇一のmassive music life

1年前のティム・クリステンセン。

2020.03.18 03:16

2019年の4月4日、ティム・クリステンセンと話をした。彼はその前夜、川崎・CLUB CITTA' で、日本では初となる単身でのアコースティック・ライヴを行なっていて、その穏やかな余韻がまだ頭に残るなか、滞在先のホテルのカフェにて午前中のうちから取材に応じてくれたのだった。そしてそれが、彼の短い日本滞在期間中における唯一のインタビューとなった。

その際の記事は昨年6月に発売された『MASSIVE Vol.34』に掲載されているが、それから約1年を経てDIZZY MIZZ LIZZYの超強力な新作『ALTER ECHO』が世に出たことを祝して、同記事から少しばかり、彼とのやりとりを紹介しておこうと思う。ちなみに全然関係のない話だが、今、「やりとり」と打つべきところ間違って「槍と鳥」と打ってしまった。なんだか疲れているようだ。というわけで、以下、すべて昨年4月の時制での発言であることを踏まえてお読みいただければ幸いだ。


◆アルバムがすぐに出るというわけではないにせよ、新曲が発表されるのは大歓迎だし、今年は何かをリリースすべきですよね。なにしろデビュー・アルバムの発売25周年という記念すべき年なんですから!

「わかってる、わかってるんだ(笑)。クレイジーなことだよ」

◆クレイジー?

「さっき、君が以前やっていた雑誌に載った昔の写真を見せてくれただろ? あれには驚いた。もう25年も前のことになるのか、と感じさせられた。そりゃ歳を取るわけだよなあって(笑)。だけど同時に、たいして昔のことのようにも思えないところがあるんだ。もちろん歳を取ったことは間違いないけど(笑)、両方の想いがあるよ。

 昨年はデンマークで何本かのフェスティヴァル出演があったんだけど、演奏中、曲間に喋っている時に思い出したことがあってね。おそらく去年、バンドは結成30周年を迎えているんだ。そこで〈これはちゃんとマイクを通して言うべきかな?〉と自問したんだけど、その時は言うのをやめておいた。そんなことを言うと、実際よりも古めかしい音楽に聴こえてしまうことになるんじゃないか、と思ったからだよ(笑)」

◆ははは!

「でも、それを思い出した瞬間、悟ったんだ。老けるのも無理はないってね(笑)。だけど僕らとしては、これからも若い音楽ファンにアプローチしていきたい。もちろん古くからのファンに対してはリスペクトを抱いているけどね。だけどこうして活動を続けていくなかで、新しい世代に手を差し出すことができるのは素晴らしいことだと思うんだ」

◆ええ。確かにそこで30年もの歴史があるバンドなのだと伝えられてしまうと、若いリスナーはちょっと身構えてしまうかもしれませんよね。

「そうそう、そういうことなんだよ。昨夜も終演後にちょっとしたサイン会があったんだけども、その行列のなかに14歳のファンがいてね。40歳じゃなくて、だよ(笑)。とても嬉しく思った。若い世代が僕らの音楽を掘り起こしてくれている、ということをね。僕としてもとても誇らしいことに思えたよ」

この時のティムの発言には他にも興味深いものがたくさんあった。また後日、改めてその言葉のいくつかを紹介しようと思う。とりあえず今回はこのへんで。そして、これまでDIZZY MIZZ LIZZYを知らずにきた人たちにも、是非『ALTER ECHO』に触れてみて欲しい。

1年前、取材時のティム。1995年の『MUSIC LIFE』の誌面を見せるとご覧のように驚いていた。いちばん変貌の度合いが大きいのは写真左下に収まっているソレン・フリス(ds)か。ティムは彼を指し、「知らないやつがひとり映り込んでるんだけど」と言って笑いを誘っていた。

『ALTER ECHO』DIZZY MIZZ LIZZY

えらく気が早いですが、2020年の最優秀アルバム候補確定です!