【社長通信】静かな街で
近くの山ではメジロなど野鳥のさえずりのなかにウグイスの声も聞こえ始めた。菜の花の黄色を背景に白木蓮が凛と輝く、春はあけぼのである。
それにしても街は静かだ。
毎朝、事務所の窓から見えていた子どもの通学の列が消えて早や2週間。通勤の車はひっきりなしで相変わらずなのだが、なんとも異様な眺めだ。
年度末の3月は1年の締めくくりの月でもあり、なにかと忙しいのだが、身動きがとれない。
各種行事・イベントの自粛要請により、小中高校は臨時休校、卒業式も当事者のみでひっそりと挙行されたようで、社会的共感に欠けた寂しい別れである。
月が替わると新年度、入学式、入社式など予定されるが早くも大規模な式の縮小や中止が伝えられる。新しい人生への門出がひっそりと行われることになるが、これも感染拡大阻止のためのやむを得ぬ措置と前向きにとらえたい。
新型コロナウイルスが世界的に蔓延し、WHOはパンデミック(世界的大流行)と宣言し、全世界に感染の拡大防止を呼びかけた。
人の移動、物流の制限が経済活動の停滞を招いている。未知のウイルスゆえにアンダーコントロールとはならず、先行きが見通せないことに人々の不安が増幅する。強権が発動されることなく早期の収束を祈りつつ、手洗い、換気、人混みを避けるなどの自助努力を続けるしかない。
先日、東京からの客人があって、山口市内をはじめ下関から北浦方面を案内したが観光名所はどこも人出が少なくひっそりとしていた。
唐戸市場は営業自粛と聞いてはいたが案の定開いている店がほんのわずか、めぼしいモノもなかった。
下関市内の公的な施設はほぼ閉館、赤間神宮に参拝しては、平家の無念に心を寄せた。目の前の海峡を往来する貨物船の速度が上り下りで全く違う、じっと見つめては壇ノ浦の戦いに想いを馳せた。
雨に煙る対岸の門司の街並みを見て、本州の先端にいるんだと感激し、喜ぶ客人に救われた。
雨の中、濁る海を左手に北浦街道を北上し角島へ。島に向かって延びる角島大橋の景色は水墨画のように見えたが、これも風情があってよかった。
角島灯台も入館禁止で外周をひと回り。トイレの近くに咲く黄色い水仙を見て、ここはウオッシュレットかな、などと下手なギャグを言ってはシラケさせた。
帰りは山焼き後の秋吉台を眺めて、秋芳洞へと向かったがエレベーターでの入洞は不可。新型コロナウイルスの影響がここまでか、と絶句した。
しかし、日常とは違った時空に身を置く旅の醍醐味を堪能してくれたようで客人の表情は満たされていた。
わが社も年度末の3月は警備業法に則って現任教育を実施、多忙な業務の合間をぬって5回に分けて開催、今年は全員マスクを着用しての教育。
転ばぬ先の杖、身についたKY活動を実践し、自分の身は自分で守る、これも教育の一環である。
4月からは新規の業務も始まる。先行き不透明な時代だが「一味同心」脚下照顧、地道に、したたかに前を向いて歩んでいこう。
代表取締役 加藤慶昭(3月16日記す)