ぬるま湯
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「火傷するような熱はなく、凍えるような冷たさはない。例えるなら──ぬるま湯」
(あらすじ)
今日も今日とて社畜を極めているユアサがくたびれながら家に帰ると、年下で幼馴染みのミツムが何故か上がり込んでいた。
そこから始まる、山なし落ちなしな男二人のおはなし。
※若干の下ネタ有り。
同性同士の恋愛に見えない事もないです。
上演時間:ゆっくり読んで約15分
演者:2人
比率:♂2
追記:
一人称、性別変更可。
内容を著しく改変しなければアドリブも可です。
(2020/10/21)
(登場人物)
ミツム/男(19)
本名:三井宏武(みつい ひろむ)。略してミツム。
大学生。
ユアサ/男(31)
本名:湯浅浩二(ゆあさ こうじ)。
サラリーマン。
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『ぬるま湯』/真中夜
https://mnkitybook.amebaownd.com/posts/7940399
役表
♂ミツム:
♂ユアサ:
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○ユアサ-くたびれた様子で帰宅
ユアサ「ただいま愛しのワンルーム。あぁ酒飲みてぇ。んで風呂。明日も元気に社畜するための活力……」
ミツム「よ、おかえり社畜のオッサン。邪魔してんよ」
ユアサ「……あ?」
ミツム「おん?」
○しばしの間
ユアサ「ハァ!?み、み、ミツム!?」
ミツム「ミツムだけど。久しぶりオッサン」
ユアサ「おう久しぶり。ってオッサンじゃねえし!っていうか、なんで俺んちに!?」
ミツム「なんでって……何となく?丁度近くに来てたから寄ってみた、みたいな」
ユアサ「鍵は」
ミツム「前にカナデさんから貰ったのを使った」
ユアサ「カナデ…!!!あんのクソ妹が……ッ」
ミツム「え、来ちゃ駄目だった系?」
ユアサ「いや、別に良いけどよ。でもよ、なんか、こう、一言あっても良かったんじゃないのかなぁ……みたいな?」
ミツム「え、俺連絡入れたと思うんだけど」
ユアサ「……れんらく」
ミツム「そ。『そっちに行く予定あるから、遊びに行っても良いか』って、先週の木曜に」
ユアサ「せんしゅうの、もくよう」
ミツム「んで、オッサンも良いよって言ってくれたろ。なんかすっげー丁寧な言葉で」
ユアサ「すまん。……全っ然覚えてない」
ミツム「大丈夫かよオッサン。えーと……お、あった、これこれ」
○ミツム-ユアサにトーク履歴を見せる
ユアサ「……『16日、18時から訪問ですね。承りました。心よりお待ちしております。 湯浅(ユアサ)』」
ミツム「な、オッサン許可してるだろ?」
ユアサ「……してる、な」
ミツム「覚えてないわけ?」
ユアサ「これっぽっちも。……え?俺ってば遂に意識手放しながら文字打てる域に達しちゃったの?」
ミツム「どんな域だよ」
ユアサ「会社という戦場をいかに生き延びるかの域?」
ミツム「……わぁ社畜」
ユアサ「誉め言葉をどうもありがとう」
ミツム「それは引くんだけど。……まぁいいや、つーことで今晩は厄介になりまーす」
ユアサ「いやいや待て待て!飯どうすんだよ。この家酒しかねえぞ」
ミツム「そうだと思って、ここ来る前に色々買ってきた。もう飯は出来てるし風呂だって沸いてる」
ユアサ「寝る場所は」
ミツム「ソファ。服とかタオルとかどかしたら、意外とデカかったから。あれで寝る」
ユアサ「人の家勝手に漁んなよ……」
ミツム「漁ったんじゃなくて片付けたんだけど?」
ユアサ「片付けるにしても漁るにしても、俺の私物に許可なく触った事は確かなんだよなぁ」
ミツム「安心して、エロ本には触ってない」
ユアサ「お前は俺のオカンか。……つか待て。その言い方、エロ本隠してる場所知ってんのか!?」
ミツム「……別に、タンスの裏とか見てないし」
ユアサ「ああああああ!!!?」
ミツム「なんだようるさいオッサンだな」
ユアサ「なん、で、場所!!!」
ミツム「えっマジ?適当に隠しそうな場所言っただけだったんだけど」
ユアサ「あああああ!?カマかけたのかお前!!」
ミツム「まぁそうだな」
ユアサ「てめぇこのやろ!!ひとんちで何様のつもりなんだ!」
ミツム「年の離れた幼馴染サマだろ。昔、オッサンの部屋掃除はいつも俺の役目だったの、覚えてない訳ないよなぁ?
……ガキの俺に、エロ本を堂々と見せてからかってきたのはどこのどいつだ?あ?」
ユアサ「……さて、と!ミツムの作った飯食うかな!すっげえ腹減っちまってよー」
ミツム「話題転換オツカレサマ。でも先に風呂入るだろ。オッサン、飯食ったら風呂が面倒臭くなるタイプじゃん」
ユアサ「……ミツムよ」
ミツム「なに」
ユアサ「大きく、なったな」
ミツム「茶番は良いから早く行け」
数十分後
○ミツム-机の上に料理を並べている
ユアサ「お、うまそうじゃん」
ミツム「そりゃどーも。あ、悪い。冷蔵庫に入ってた日本酒少し使った」
ユアサ「それで手作りの飯が食えるならいくらでもどうぞってやつだな」
ミツム「自炊すれば毎日手作りの飯が食えるけど?」
ユアサ「酒とコンビニ弁当で事足りる」
ミツム「うっわ不摂生」
ユアサ「……なんとでも言え」
ミツム「不摂生で将来ツルッパゲ確定、塩分過多で病院送りなオッサン」
ユアサ「ぶん殴るぞクソガキ」
ミツム「そのクソガキに現在進行形で世話を焼かれてるのはどこのオッサンですかね」
ユアサ「スミマセンデシタ。このオッサンです」
ミツム「あ、オッサンって認めた」
ユアサ「コノヤロいつか締め上げてやる!」
ミツム「締め上げるって……。俺が柔道の段持ちだったのをお忘れか」
ユアサ「げっ」
ミツム「……オッサン忘れてたのかよ」
ユアサ「別に忘れてないわ」
ミツム「……」
ユアサ「……へーへー!どうせ俺は物忘れの激しいオッサンですよ!」
ミツム「そこまで言ってないだろ」
ユアサ「オッサンの被害妄想ですぅ。……そういや、どうなんだそっちの調子は」
ミツム「なにが?」
ユアサ「大学。上手くいってんのか?彼女の一人や二人出来たか?」
ミツム「あー……、まあ」
ユアサ「なんだその歯切れの悪さは」
ミツム「別に。まぁ、勉強の方はついていけてる。教授にも気に入られてるしな」
ユアサ「ふぅん。友達とか彼女は?……あ、いや、言いたくなかったら別に良いんだが」
ミツム「オッサンに聞かれて困る事なんて特にないし。……そんで友達は、まぁそこそこいる」
ユアサ「流石人たらし」
ミツム「別に俺がたらしてるわけじゃない。勝手に向こうがくっついてくるだけ」
ユアサ「知ってるか、世の中ではそういうのを人たらしって言うんだぞ」
ミツム「さいですか」
ユアサ「他は?なんかあったか?」
ミツム「まぁ、あとは彼女とかも。できた、かな」
ユアサ「おお……!ミツムにも!大学にして!初めての春が!オッサン感動だぜ!」
ミツム「二人いる」
ユアサ「は?」
ミツム「この前までは三人いた」
ユアサ「……彼女が?」
ミツム「そうだけど」
ユアサ「……は、はぁ!?!?!?」
ミツム「……なんだよ」
ユアサ「いや、その……、ひ、一人一人にちゃんと誠実に接してる、か?」
ミツム「一応?」
ユアサ「一応って何!?!?ミツムくんが大人になりすぎてて俺ってば驚きなんだが!?」
ミツム「顔が良いから付き合いたいんだと。ブランド感覚?ってやつで俺を侍らせて自慢して、気持ち良くなりたいんだとか」
ユアサ「女子ぃ!?!?いたいけで純粋なミツムになんてことしてやがるんだ!?」
ミツム「いたいけで純粋は流石にキモくない?」
ユアサ「それは言い過ぎかもしれねえけど!でも、好きだから付き合ってる訳じゃないんだろ?ミツムはそれで良いのかよ?」
ミツム「理由はむかつくけど放っておいてるかな。ま、ヤることはヤってるから何言われようがされようが別に構わないし」
ユアサ「やることは…って夜の方ですか」
ミツム「それ以外にある?」
ユアサ「……落ち着け!?今は夜の8時だよな?そういう話はまだ早いよな!?」
ミツム「え、男同士だし良くない?」
ユアサ「何が嬉しくて幼馴染の下半身事情を聞かなくちゃいけないんだ……!」
〇ミツム-頭を抱えたユアサをじっと見ながら
ミツム「ま、どっちにしろ本気になれないし」
ユアサ「……あん?何か言ったか?」
ミツム「オッサンはつむじ周りから禿げそうだなって言っただけ。……オッサンの方はどうなの?」
ユアサ「なにが。ハゲがか?」
ミツム「ちげぇよ、彼女とか結婚する相手とかいないのかって話」
ユアサ「……あぁ。話の流れ的にハゲの方かと」
ミツム「人のハゲ事情に興味無いんで。それで、実際の所どうなわけ?」
ユアサ「……いない、な」
ミツム「ふぅん?オッサン、社畜だけど良い所の会社行ってるじゃん。合コンとか行ったら釣れそうだけど」
ユアサ「釣れそうって……お前なぁ」
ミツム「はいはい、言葉がお悪うござんした。合コンとか行ったらすぐに彼女とかできそうだけど」
ユアサ「彼女ねぇ。まぁ、いたらいたで楽しいし幸せだとは思うけどな……俺は良いかって」
ミツム「良いって、いらないってこと?」
ユアサ「おう。これから先、俺に好きな人は出来ねえだろうし、欲しいとも思わないし」
ミツム「あー……、これ聞いたらおばさん泣きそうだな」
ユアサ「お袋には申し訳ないとは思ってるけどよ。無理なモンは無理だからな。あのクソ妹に頑張ってもらうしかねえ」
ミツム「あ、カナデさん彼氏できたってよ」
ユアサ「……聞いてねぇぞ」
ミツム「オッサンには言ってないとかなんとか。もうすぐプロポーズされそうらしいって」
ユアサ「そうかよ。……まったく。アイツが幸せそうでなによりだ」
ミツム「そうだな」
ユアサ「……」
ミツム「……」
○しんと静まる
ユアサ「あ、そうだ。ミツムも風呂入って来いよ。皿洗いはやっとくからさ」
ミツム「そう?じゃあ、お言葉に甘えて。……くれぐれも、皿、割るなよ」
ユアサ「誰が割るか。流石にそれくらいはできるわ」
ミツム「本当かよ」
ユアサ「皿洗いのユアサと呼ばれていたことがあってだな」
ミツム「聞いた事ねぇよ」
○少しの間の後、二人して笑い出す
ミツム「じゃ、風呂行ってくる」
ユアサ「おー。……一応なってると思うけど、風呂の温度、確認してから入れよ」
ミツム「は、」
ユアサ「昔からぬるま湯派だったろ、お前」
ミツム「あ、あぁ。そう、だな。……サンキュ、オッサン」
ユアサ「おー」
○ユアサ-ミツムを見送った後
ユアサ「好きな人は出来ない。今までも、これからも」
ユアサ「ぬるま湯、か」
同時刻、風呂場にて
○ミツム-湯につかりながら
ミツム「ぬるま湯、ね。……オッサン、覚えてたんだな」
ユアサ(M):火傷しそうな程の熱はなく、かといって、氷のように冷たいわけでもなく。遠いわけでも、近いわけでもない。中途半端で、何もかもが曖昧。
ミツム(M):言うなれば『ぬるま湯』。心地よく、刺激のない何かに、俺は——いや、俺達は、いつまでも浸り続けている。