君に成功を贈る
皆さんはん、中村 天風さんという方を御存知でしょうか?
おそらく知らない方が多いと思いますので、まず、天風氏の経歴からご紹介します。「明治9年、華族に生まれながら、軍事探偵として満州へ、日露戦時下めざましい活躍をする。帰国後、奔馬性結核にかかり、救いの道を求め欧米を巡るも回復せず、日本へ向かう途中、ヨガの聖者カリアッパ師に奇遇、ヒマラヤのカンチェンジュンガに導かれ行修。日本人初のヨガ直伝者となる。 帰国後、東京実業貯蔵銀行頭取をはじめ、大日本製粉(現・日清製粉)重役となるも、大正8年、一切の地位をなげうち、辻説法に転じる。 その波乱の半生から得た『人生成功の哲学』は、触れるものをたちまち魅了し、皇族、政財界の重鎮をはじめ各界の頂点を極めた幾多の人々が「生涯の師」として心服した。昭和43年没後も、天風門人となる者が後を絶たない。 」(出版社からの紹介より)
本書は、この天風氏の成功哲学を氏が行った数多くの講演から、その内容を抜粋したものです。まず本書の「まえがき」から天風氏の教えを簡単に紹介します。「天風氏の教えを端的に表すと「『心の想いが人生を創る』ということです。つまり、『心のあり方・使い方』一つで、人生をどこまでも生き甲斐のある、豊かな、幸福な、価値観の高いものにするとこができる、ということだと思います。氏は、『感情が人間の運命を左右する』と説いています。人生とは、日々の出来事に対する自己の『変化対応力』に左右されるのです。つまり、この人生を左右する四つの感情の中で喜びや楽しみをいかに多く自分自身に感じさせ、怒りや悲しみをいかに統制するか、ここで人生はまったく違ったものになるでしょう。」(財団法人天風会 前理事長 合田 周平氏)
本書の天風氏の教えで、びたび登場するのが「心の積極性」という言葉です。つまり、心を日常から清め、何事にも感謝し、強く、明るく生きる、ということです。「心の態度が積極的というのは、いついかなる場合であっても、心の尊さを失わず、また強さを失わず、さらに正しさと清らかさを失わないというのが、積極的ということなんです。」(P166)
「心」と言えば、京セラ創業者の 稲盛 和夫さんも「心の在り方」をとても大切にしています。実際、稲盛さんは天風氏をとても尊敬していて、稲盛さんは、自らの著書の中でたびたび天風氏の哲学やエピソードを紹介しています。例えば稲盛さんは、自らの著書の中で「(カニが掘る穴に例えて)会社は経営者の器以上には大きくならない。」とか、「自らの人生は自分の思い描いているように実現する。」と話していますが、天風氏も本書において「昔の諺に『蟹は甲羅に似せて穴を掘る』というのがあり、この言葉はまさに人間に与えられた大きな戒めなんです。出世する人、成功する人は、その心の内容が極めて積極的なんです。」(P121)とか、「現在のあなた方の想いや考え方が、これからの人生において、どんどん花咲いてくるんです。(中略)もっとはっきり言えば、あなた方が、ほんとうに理想的な、思い通りの人生に生きようと思うなら、『ああなりたいな』とか、『こうなりたいな』と思うだけでなく、もうそうなった状態を心の中に情熱の炎でもって、ありありと描くんですよ。オリンピックの聖火のごとくにね。」(P151)などと似たようなことを語っています。
この天風氏の教えの中で、興味深かったことが一つありました。それは、「心を清らかにする」実践方法を話しているところです。それは寝がけに、嬉しくなることや楽しいことを心に描きながら就寝するということです。「心の垢をとりのぞいて、積極的な心をつくるいちばん簡単な方法、それは寝がけが肝心なんです。理想的には寝床に入ったら、何も考えないのが一番いいんです。(中略)今日一日、身の回りでおこった『面白くないこと』『腹がたったこと』を思い出して『あの野郎許せない』なんて、寝床で起き上がってまで怒ってやしないかい? これ、寝際の心を汚しているんですぜ。だからね、そんな時は、嬉しくなること、楽しくなることだけを心に描いて寝るようにしてごらん。(中略)自分の命というものを本当に大切に考えたならば、夜の寝際だけは、きれいな心で寝るようにしてごらん。どれだけ命が強くなるかわからないから。。」(P97)この言葉に関して言えば、例えば、稲盛さんは、「人の想いを実現するのに大きな役割をするのが『潜在意識』である、」とよく話されますが、人が寝ているときの夢というのは、その「潜在意識」の現れともよく言われています。その夢を見るのは就寝時なので、その寝入りに心を清らかにする(ために嬉しくなるようなこと、楽しくなること、と思い描きながら就寝する)というのは、とても理にかなっていると思いました。(面白くないこと、腹が立ったことの他、日々の悩みごと、とか心配ごとがつい頭に浮かんで夜眠れない、ということもあるかもしれませんが、そいうった時にも、心を清くして就寝し、自らの想いを潜在意識の中に刷り込んでいく、というのも理にかなっていると思います。)
天風氏の教えを信奉する方は、分野を問わず著名人にも多く、例えば出版社の紹介においても「(稲盛氏の他)中村天風師に影響を受けた主な人々として、原 敬(元首相) 東郷平八郎(元帥) 山本五十六(元帥) 双葉山定次(日本相撲協会元理事長・横綱) 松本幸四郎=七世(歌舞伎俳優) 堀越二郎(「零戦」設計者) 越後正一(伊藤忠元社長) 廣岡達朗(野球評論家) 宇野千代(作家) 松下幸之助(松下電器産業創業者) 伊達公子(元テニスプレーヤー) 松岡修造(元テニスプレーヤー) …他多数」 というような錚々たる名前が並んでいます。