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砕け散ったプライドを拾い集めて

外出禁止令

2020.03.20 08:16

(「サンタモニカ・ピア」パークする車がすごく少ない。)

コロナ・ウイルスの跋扈は止まらない。 ロスアンジェルスの友人から3月21日から4月19日まで「外出禁止令」が発令されたと言ってきた。
 ①ロスアンジェルス市からは「外出を控える緊急命令」(Safer at home)
 ②カリフォルニア州から「自宅待機命令」(Stay at home) のダブル掛けとのこと。
「医者」と「ドラッグストア」は開いているという。 とにかく、みなさん誠に従順に従っているらしい。

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これで思い出すこと。 

20年以上前、LAのハンコック・パークの夜。
ピカピカと点滅するライトが気になる。カーテンの隙間からの覗くと、パトカーが停まっている。玄関からちょっと恐る恐るへっぴり腰で出てみた。警官が、こちらを認めて、歩いてくる。まだ幼さを十分に残していて初々しい。

「Curfewだから、家の中にいてください」
「カーフユー?」
「そうCurfew。家に戻って戸締りをして、外には出ないでください」

なんだか、緊張している表情に気圧されてスゴスゴ、そそくさと家に戻る。 すぐに辞書でcurfewを引いてみる。これが外国人の辛いところ。自国に住んでいて、日常生活で国語辞典など引いて暮らしているやつなんか珍しい。
curfewは戒厳令などに伴う「外出禁止令」と出ている。一番軽い意味は「門限」だと。「戒厳令」自体はmartial law。

〝なんだ?どうした。また暴動か?〟 その時が「ロス暴動」から5年経った頃だが、生々しい記憶は残っていた。
それでも、野次馬根性を制御できずに、二階のベランダから夜の街を臨んでいた。 我が家の前の四つ角のみならず、通りの交差するところには必ずパトカーが置かれてある。左右に光が流れて点滅が繰り返される警告灯を屋根に乗っけた例のアメリカン・スタイルが、くっきりと碁盤の目の通りにの角々に規則正しく置かれているので、まるで光のリレーでもやっているようでキレイだ。

……と、その時、バタバタバタバタというという独特の爆音が聞こえてきた。何ブロックか先。ヘリコプターなのかな……と思う間もなく、強烈で一直線のビームが闇の天空から地上に突き刺さる。何かを探すように、そのサーチライトのビームがくるくると回転して円錐形を描く。

 その時、地上では、警官に追われた容疑者が汗まみれになって必死で逃げ、警官も怒号を発しながらも息を切らし追い駆けている、などの極めてイキシニを賭けた生臭いドロドロのことが起きているのだろうと。
しかし、ここから見る限りでは、漆黒の闇を気持ちよさげに切り裂く〝光のナイフ〟もしくは〝光の降臨〟 のイリュージョンにしか見て取れない。ファンタジーにしか見えない。

 (いや~!かっこいい。まるでハリウッド映画のようだなあ……)

……と心の中でつぶやいて、〝何を言ってんだか……ここはハリウッドから5分のところじゃないか〟。

 ピストル強盗だったらしい。

翌日、会社でソノ話を興奮気味にした。 ずっと聴いていた経理のおばさんが、 「Curfewが出ているんだから、家に閉じこもっていなきゃダメですよ。ベランダで見物なんてもってのほか。流れ弾にでも当たったらどうするんですか」 とキツく叱られた。