猫の置き物
猫の置き物(タテ x ヨコ 9,3 x 8,5 cm)、イギリスの19世紀終わり頃の物です。可愛いですね猫の親子。可愛い物は普通は余り好きではありませんがこれは好きです。
梅崎春生の「怠惰の美徳」(中公文庫)を読みながら、彼の文章、言葉が半世紀以上経つのに何故古びておらず、今我が身に起きていることに重ねて読むことが出来るのか、考えていました。文学の言葉でもその時代の「浮力」の助けを借りて成立している類いのものがあると思うんです。だからその時代の「浮力」が消失してしまうと、今迄感じられていた魅力が急に褪せてしまい、古く感じられ読めなくなる。「浮力」とはその時代の社会の諸状況が成立させている、思い込み、時代の色、みたいなもので、その中でだけ成立している言葉と、時代を超えて読み継がれていく言葉とは次元の違うものだと思うんです。この梅崎春生さんの言葉は本当に我が心に響いてきましたね。特に終戦直後に書かれた短い随筆は、新しくもあり、何処かアナーキーで、ユーモアもあり、何故今まで自分が知らなかったのか不思議ですが、まあ出会いなんてそんなもの。自分にとっての時期、旬、ってものがあるんですね。この本の中の、昭和22年5月に書かれた、「茸の独白」、とても独特で良い文章です。もしご興味あれば読まれてみて下さい。出来れば本屋で買われて下さい、クリックではなく。僕がこの本を買って書店を出るとき、ガラスのドアに、来月を持って閉店します、の張り紙がありました。残念です。
この本を新しい形で、編集して世に出してくれた中公文庫の編集者の方に感謝の意を表したいと思います。ありがとうございます。2年前に出て、3刷を重ねているので、売れているみたいですが、このような本が売れる理由は分かる気がします。
では皆様、お元気で。