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サッカー指導者考 鹿島大吾

2020.03.22 09:17

                           サッカー指導者考

 

 こんにちは、新4年生の鹿島大吾です。

 本稿では、学生サッカーにおける指導者の在り方について、いま私が考えていることをお話しします。

 

①九大サッカー部と指導者

②指導者の効能

③今までに出会った指導者

 ・小学生

 ・中学生

 ・高校生

④戦術班の取り組み

⑤まとめ

⑥新入生へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

①九大サッカー部と指導者

 まず、これまでの部員ブログでも何度か言われていることですが、九大サッカー部には指導者がいません。一橋大サッカーOBの金田大樹さんは昨季途中からアドバイザーとして、サッカーに関わることから組織運営や対外関係に関わることまで幅広く支援をしてくださっていますが、会社員としての本務があるため、頻繫に顔を合わせている訳ではありません。

 私が入部してからの過去3年間で、サッカー面の指導に当たってくださった方が金田さんの外に2名いましたが、いずれも長続きせずチームを離れてしまいました。また、今季始動のタイミングで、福岡大サッカー部で学生コーチをされている方とご縁があり、指導をお願いしましたが、直前で破談になってしまいました。

 このような経緯があり、現在九大サッカー部は金田さんや顧問の野上大史さんのアドバイスを受けながら、基本的には学生主体で運営しています。

 

②指導者の効能

 先ほども述べた通り、私たちの学年は昨季終了前から話し合いを重ね、福大のとある学生に指導者としてチームに加入してほしいと要請しました。これは、学年間の共通認識としてコーチ招聘にメリットがあると考えた結果でした。ここからは、その話し合いの内容も踏まえて、学生サッカーのチームが指導者をもつことの効能についてお話しします。

 私たちが指導者に求めたものは、「外からの目」です。指導者がいるだけで、日々のトレーニングにハリが出ます。「見られている」という意識が選手一人ひとりにポジティブに作用し、意欲が芽生え、無責任なプレーはできなくなります。甘えに聞こえるかもしれませんが、学生サッカーにおいては非常に現実的な話です。特に日常生活に誘惑が増す大学生にとっては、内側だけの自律機能でチームを成り立たせ、100%サッカーに集中することは困難だと感じています。サッカーチームに限らずあらゆる組織において、客観的な立場で内部の状況を見つめることができる人間が必要不可欠だと私は考えます。

 指導者の目は、メンバー銓衡の場面でも必要でしょう。これまで九大サッカー部では、キャプテンを中心に最高学年の部員が試合のスタメン及びベンチメンバーを銓衡してきました。現在もほぼ同様の形をとっています。メンバー銓衡はあらゆるカテゴリーのサッカーチームにとってかなりデリケートな問題です。それを選手が担当することは相当のストレスがかかりますし、平等性の担保も危ういと感じています。一緒にプレーしている選手の感覚の方が寧ろ外から見ている人間よりもリアリティがあるという意見も理解はできますが、やはりメンバー銓衡は客観的かつ固定的で明確な基準の下なされるべきだと考えています。指導者がこの責務を負うことで客観性と固定性が担保されるという点が、指導者の効能の一つだと言えます。

 もう一つ、「外からの目」が必要だと強く感じる場面があります。試合中です。プロチームや代表のレベルでは、それぞれの監督による試合中の采配や修正能力が注目されますが、学生サッカーでもその重要性に差はありません。試合中の戦術的修正は、なかなかピッチ上からできるものではありません。メンバー交代も、毎回のトレーニングを実際に見て全選手の特長や調子を把握していないと、迷いが生じたり判断を誤ったりする可能性が高いです。過去のリーグ戦でも、指導者がいてくれたらと感じることが何度もありました。

 どこか無いものねだりのような内容になってしまいましたが、指導者の目に期待される効能を3つの場面に分けて挙げました。現在九大サッカー部では、指導者不在の穴を埋めるべく、金田さんの手を借りながら戦術班を中心に様々なタスクに取り組んでいます。戦術班の取り組みについては後ほどお話しします。

 

③今までに出会った指導者

 ここからは、私が小学1年生のときに本格的にサッカーを始めてから、九大に入学するまでの12年間で出会った指導者のなかで印象的な方々のことを振り返りながら、指導者から学び得たものについて考えていきます。

 まず小学生の頃はほとんどの期間、父の指導の下サッカーをしていました。当時通っていた小学校と隣の小学校の児童で構成される少年団に所属していましたが、指導者不足から保護者に対して募集があり、父がそれに応えました。父は今でもその少年団でコーチを続けていますが、昔ながらの少年団は指導者不足に加えて子ども不足も深刻で、私が所属していた頃よりもかなり小規模になっているそうです。今では全国的に小学生年代からクラブチームに入ることが一般的になっています。専門の指導者がいたり、送迎バスが用意されていたりして、保護者の負担が少ないのが大きなメリットになっています。

 父からは止める・蹴る・運ぶの基礎技術から、試合に臨む姿勢までいろいろなことを教えてもらいました。サッカーのイロハニホヘトチリヌルヲを学んだといったところです。試合の後には、母が撮ったビデオを見ながら個別指導を受けました。当時この時間はかなり憂鬱でしたが、一選手としては指導者から即フィードバックを受けることができる有意義な時間でした。あそこまで綿密な指導は父子だからこそできたものですが、実際の映像を踏まえた指導は、何よりも選手の成長に直結するものだと思います。

 中学生の頃は、エスパルスSS駿東というクラブチームに所属しました。公立中学校の部活動では専門の先生が不在のケースも多々あり、テスト休みが多かったり中体連は夏休み前に終わってしまったりと、なかなかサッカーに集中できる環境ではありません。私はクラブチームに所属したことで素晴らしい指導者に出会うことができました。

U-13チームでは黒沼遼さんの指導を受けました。当時かなり若い方でしたがとても意欲的で、熱心に指導してくださりました。黒沼さんが突然スペインへサッカーの勉強に行かれて急なお別れになってしまいましたが、帰国後縁あって福岡のチームでコーチをされており、私が九大に来てからお会いする機会もありました。

 黒沼さんは統計データを持ち出してサッカーの得点・失点の可能性について話をしてくれたことがあり、今でも記憶に残っています。当時にしてはかなり先進的な試みだったのではないでしょうか。データとスポーツの話を少ししますと、私は野球が好きでよく試合を見ますが、野球はゾーンの区分けが明確で一つ一つのプレーが分断されているため、球技のなかでは飛びぬけてデータ解析との相性が良いスポーツです。特にメジャーリーグはセイバーメトリクスが野球を支配していると言えます。サッカーはまだ統計データの介入があまり進んでいませんが、今後かなりの進展が見込まれる分野です。私が以前書いたブログで「SCORE! MATCH」というサッカーゲームを用いてデータ解析(のようなもの)を試みているので、そちらも是非チェックしてください。

 U-15チームでは新村泰彦さんの指導を受けました。私と同じ静岡県沼津市出身の元Jリーガーで、大学時代には関東リーグで得点王になったこともある方です。ゲームに入って一緒にプレーしたときには、ポジショニングからフィニッシュまでの一連の流れが秀逸で、同じポジションの元一流選手の動きを肌で感じることができたことは得難い経験でした。このように実際のプレーで示せる指導者もとても魅力的な存在です。

 中学校を卒業後、私は清水東高校に進学しました。2年生の時に同校OBの長澤和明さんがサッカー部のヘッドコーチに就任しました。元日本代表でジュビロ磐田の初代監督も務めた方です。長澤さんの下でサッカーをした約2年間は、私のサッカー人生のなかで最も密度の濃い期間でした。長澤さんの指導は、ボール扱いに対する意識の差やバリエーションの多さ、また試合中に相手の時間を削るマリーシア的な振舞いにプロの凄みを感じました。長澤さんは、サッカーについてよく考える機会を与えてくれた指導者でした。

 こうして振り返ってみると、それぞれの指導者の戦術的アプローチについての記憶はほとんどなく、「こういうサッカーを標榜していた」と自信をもって明言はできません。

 

④戦術班の取り組み

 話を九大サッカー部に戻します。現在九大サッカー部戦術班では、プレーモデルの言語化に取り組んでいます。「こういうサッカーをしたい」という具体的かつ明確なモデルを作成し、それを全部員が共通認識としてもつことが目標です。少人数の戦術班で昨季までのサッカーを踏まえて今季目指すべきプレーモデルを設定し、それをミーティングで全体に共有し、実現するための練習メニューを組んで落とし込み、試合もそのモデルを評価基準としています。まだチームに浸透しているとは言い難い状況ですが、シーズン終了後には全員が「こういうサッカーをやってきました」と言葉にでき、来季以降も継続していってもらえるようなプレーモデルを作り上げたいと思っています。

 戦術班のタスクはほかにもあります。例えば、公式戦の開幕を見据えて練習試合の相手を決めることもしています。練習試合の際には一人の選手がマルチなポジションで貢献できる可能性を広げるため、様々な組み合わせを試しながらメンバーを決めています。

 試合を中心としたトレーニング→プレビュー(目標設定と相手の分析)→試合→レビュー(反省と次戦までの改善)→トレーニングのサイクルはまだうまく回っていませんが、5月のシーズン開幕を目処に練習試合を重ねながらよい循環を完成させたいです。

 公式戦のメンバー銓衡も戦術班でやらなければならない以上、ある程度の工夫が必要です。まず、明文的な基準を設定しました。ピッチ内外でのチームに対する貢献と直近2週間の継続的な練習参加が条件です。この基準を満たした選手だけが試合に出場する資格を有します。そして、トレーニングの様子を見て試合のメンバーを決めるといっても、決める側も一緒にやっているため全ての選手のプレーを確認することは不可能です。その点は、紅白戦をビデオに収めて練習後にそれを確認することで補っています。

 このような取り組みは、サッカーチームというものを体系的に考えることができるという点で、私にとって非常に有意義なものだと感じています。私は大学を出たら、高校の教員になろうと思っていますが、教科指導は勿論、サッカー部の顧問になることも楽しみにしています。そのときには、この戦術班での経験が活きる場面がいくつもあると確信しています。

 

⑤まとめ

 想像以上に冗長な文章になってしまいました。読み直して推敲するのも億劫なほどです。読者のためではなく、自分自身の思考の整理のためのブログになりました。ブログなんて、こういう持ち回り制で一回きりのブログは特に、そういうものなのかもしれません。

 学生サッカーにとっての指導者の価値について考えてきました。私はこれまでかなり指導者に依存してサッカーをやってきたのかもしれないと感じました。九大サッカー部に入っていよいよ4年目、指導者がいない環境にも慣れましたが、学生主体の組織として望ましい在り方には程遠いとも感じています。選手として、最高学年として、戦術班として、まだまだ出来ることはいくらでもあります。残りの数ヶ月間覚悟をもってやり抜きましょう。

 

⑥新入生へ

 九大サッカー部では新入部員を大募集しています。現在、部員不足で11対11の紅白戦もできない状態です。練習見学や参加はいつでも受け付けています。プレイヤーは勿論、チームの一員としてピッチ外のサポートをするチームスタッフや学生コーチも募集しています。戦術班の取り組みに興味を持ってくれた方は気軽にお声掛けください。高校でプレーには区切りをつけたけれど、まだまだサッカーに関わりたい、サッカーについて知りたいという方にはうってつけの場所だと思います。1年生が突然入って上級生に意見するのは気が引けると思う方もいるでしょうが、言いやすい雰囲気はこちらが責任をもって作ります。実際、戦術班に所属する新2年生の山本は積極的に発信をしてくれる中心的存在です。

 戦術班は今季始まったばかりのまだまだ未熟な組織ですが、意欲をもったメンバーの集まりです。学年問わず、新しいメンバーも募集中です。一緒に九大のサッカーを作りませんか?いつでもお待ちしております。

 それでは、ようやく筆を置くことにします。お次は是非グラウンドで。

 

 

~筆者紹介~

鹿島大吾(かしま・だいご)

九州大学文学部。中国文学・音韻学を専攻。卒論構想発表の題目は「唐詩押韻攷」(※攷=考)。趣味はバンドのライブとドライブ。

ポジションはFW・SH。サッカー部では戦術班の外に、会計(近日中に引き継ぎ予定)、カレンダー作成係、新歓隊長を務める。