ストローマンが集めたアメリカ代表が本当にWBCに出てきたらどう戦ったらいい?
WBCアリゾナ予選と東京オリンピックのアメリカ大陸予選が、新型コロナウィルスの影響で開催延期となり、数少ない野球の国際大会を目にする貴重な機会がなくなってしまいました。そんな中、3年前に行われた第4回WBCでの活躍を回顧したメジャーリーガーがいます。決勝戦で勝利投手となり大会MVPにも選ばれたマーカス・ストローマン投手(SP/ニューヨーク・メッツ)です。今までアメリカ出身の選手が、WBCの前年の段階で自発的に情報発信したなかった気がします。大会のプロモーションなどで会見の場に臨むようなことはありましたが、今回のような”素”での参加表明はこれまで無かったように思います。それも前回アメリカ代表が優勝したことが何よりも大きかったのでしょう。これまでWBCがアメリカにおいて盛り上がりに欠けていた理由として、『アメリカ代表が勝てていない』ことを挙げられることもありました。個人的には、その意見に対して正直懐疑的に思っていましたが、第1回,第2回のWBCで日本が優勝して盛り上がったように、アメリカでも(少なくとも参加した選手は)WBCでまた勝利し感動を味わいたい、という想いが高まったのでしょう。言われてみれば、その前の第3回大会でも同じようなことは起きていて、決勝戦まで進出したドミニカ共和国とプエルトリコは次の第4回大会では1次ラウンドからえらい盛り上がりようでした。
そのMVP男ストローマンが、3月19日にツイッターにおいて第4回WBCへの参加を呼び掛けるツイートをしたところ、たくさんのメジャーリーガーが反応しました。そのメンバーを見てみると、前回参加メンバーからは、ナ・リーグ首位打者クリスチャン・イエリッチ(OF/ミルウォーキーブルワーズ)、世界最高峰の三塁手ノーラン・アレナード(3B/コロラドロッキーズ)、パドレスの主砲エリック・ホズマー(1B/サンディエゴ・パドレス)が参加表明をしました。投手では、トレーニング施設『ドライブライン』で有名になったトレバー・バウワー(SP/シンシナティ・レッズ)が参加表明しています。これまで名前が上がっているメンバーだけみても結構な戦力に聞こえますが、もう少し参加選手のスタッツを深堀してみたいと思います。
先発投手が手を挙げた投手陣
今回ストローマンの呼びかけに応じた投手は全部で6人。内、ストローマンも含む5人が先発投手です。しかも、チームでローテーションの1~2番手を担う本物で、内4人が昨シーズン2桁勝利をマークしています。手っ取り早く選手の総合的な貢献度を表す『WAR』を見てみましょう。WARの値は、2~3程度だとチームのレギュラーメンバークラス、つまり3以上のWARの選手は、メジャーの中でも上位に入る選手だとお考え下さい。因みに日本人投手のWARを見ると、ダルビッシュ有投手が2.6、田中将大投手が3.3、前田健太投手が2.5でした。では、今回のメンバーを見ると、ストローマン投手が3.9、バウワー投手が3.3。凄いのがここからで、マイク・クレビンジャー投手(SP/クリーブランド・インディアンズ)が4.5、ウォーカー・ビューラー投手(SP/ロサンゼルスドジャース)が5.0と凄い選手であることが分かるかと思います。
侍ジャパンのバッターから見て気になるスタッツは、奪三振率の高さです。典型的なグラウンドボールピッチャーであるストローマン以外は、どの投手も奪三振率(K/9)10以上をマークしています。国際大会になると、マスコミが皆揃えて口にするのが「動くボール」ですが、このクラスとなると攻略に必要なのは動くボールだけでありません。クレビンジャー、ビューラー、ブレイク・スネル(SP/タンパベイ・レイズ)は、平均95マイル(≒153km/h)以上の速球を投げ込んできます。そして、速球の球速が速いということは、ツーシームやシンカー系のボールも比較的速いので、WBC以外の国際大会で対戦してきたような軟投派の動くボールとは質が違います。また、フライボール革命対策で注目が高まったトレンドを表すかのように、持ち球にカーブ(特に縦に割れる12-6カーブ)を武器にする選手も多いようです。速球とカーブで球速差がかなりあります。カーブだけならばカーブ打ちを得意とする打者も日本にはたくさんいると思いますが、投球の中心はストレートだと思いますので豪速球にも負けず、カーブにも手を対応できるようにしなければなりません。そうなると中々…。
速球/変化球という要素以外に、始動からリリースまでのタイミングの取り方や、短い投球間隔に対し、日本とは全く違う適応が求められます。メジャーリーグに移籍したバッターがこれらの適応に何試合も必要とする訳ですから、超短期決戦となる国際試合では適応を待つだけの時間はありません。タイミングが合っていないとなれば、即交代するなど早めの判断が必要になります。さらに、日本代表は開催国の1つとして、大会終盤になるまでメジャーリーガーの多い国との対戦が少なくなることが予想されます。勝ち進む上では有利ですが裏を返せば、本当のトップクラスのメジャーリーガーの対戦は、ぶっつけ本番となるということです。なんとも”ジレンマ”です。
これまで侍ジャパンは、台湾やメキシカンリーグ、オーストラリアリーグといった格下相手の強化試合が多かったですが、WBCの勝負所を考えたときに、彼らよりもむしろ日本のプロ野球球団に所属する外国人選手を結成して相手にした方が、仮想メジャーリーガーとして良い強化試合ができるように思います。1995年に阪神大震災の復興チャリティーマッチで、キャッチャー以外オール外国人のチームが結成されましたが、似たようなことが出来ないかなと度々思います。
完全に話がぐだぐだになっていますが、こりゃ厳しいなぁ、という話でした。
打者はもっとえげつない
打者は投手よりももっとえげつない面子が集まっています。皆昨シーズン2桁本塁打をマークしており、中には40本以上打っている打者が4人もいるのですよ。これだけの面子となりますと、弱点なんぞ簡単に見つかる訳もないのです。打撃だけでなく守備についても見てみましたが、セイバー系守備指標”UZR”には特に大きな穴があることもなく、むしろサードやショート、ライトが鉄壁でお手上げでございます。前回WBC準決勝で侍ジャパンがアメリカ代表と対戦した時は、高めの速球を上手く使って、菅野投手と千賀投手が三振の山を築きましたが、今回もそこを狙って投げ切れる投手を起用して、どうにかロースコアに持ち込むしか勝利の道はないのかなと思います。
もちろん、これらの選手はストローマンの呼びかけに反応しただけであって、実際に来年のWBCに彼らが参加できるかは、所属球団の許可次第です。しかし、少なくともアメリカ代表にはWBCに参加したいと思っているトップクラスのメジャーリーガーがこれだけ居るというのは事実な訳で、前回大会以上に強力なアメリカ代表メンバーが侍ジャパンの前に立ちはだかる可能性は高そうです。
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