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薔薇と脳髄の向こう

プルートノンプラネット

2020.03.25 06:00

 

忘れられた。

どこにも、もう、居場所はない。

いや、あの小さな惑星に忘れられたくらいで、どうということもないのだ。

所詮、一惑星の戯言だ。

気にしない、と言い聞かせた。

こうしているうちに、何百年経ったのだろう。

時の流れなど、関係のないことだ。

もう、何億年も生きているのだから。

もう滅んでしまっても、別にどうということもなくて。

誰も悲しまないだろう。

ただひとつ、心残りがある。

あの小さな惑星から一度だけやってきた、

小さな命の子だ。

忘れられない。

何にも執着したことのないこの星が、この地全てで覚えている。

星に合わせて変わる体温は、少し不安になる優しい儚さだった。

ゆっくりと閉じて再び開く瞼は、純粋な宇宙より美しかった。

また、出会えないだろうか。

もしそれが叶わないなら、せめてこの記憶が、

何処にもいかないようにつなぎ留めたい。

忘れないように、何度でも。

枯れてしまったこの星の女神だった。

そう願ううちに、君は再びここへ来た。

何にも代えられない喜びと、切なさ。

君をあの星へは還さないよ。

ここへ来たなら、もう逃げられないってわかっていたはずだろう。

良いだろう?

良いと言っておくれ。

明日が来るにはまだ早すぎるから。

過ぎた足跡を見ようよ。

もう忘れ去られるのは、御免なんだ。

君に忘れ去られるのは、特に御免なのさ。

君の肌が、星の空気で焼けてしまわないかが心配だ。

君のこと、何も知らない。

知らない事ばかりだから、知りたくなってしまうんだろう。

逃げられない辛いものを抱えてる。だから、愛せる。

黒い海に飲み込まれる方がよっぽど楽なのさ。

思い悩むことなんかないのだよ。

一緒に宇宙を見よう。

何憶光年も離れた星を見よう。

五億に光り輝く星を、君へあげよう。

僕には、きっとそれしかできないから。

許しておくれ。シェイプシフター。

決して逃れられないから。

愛おしい我が妻よ。

君を想った百年の日々。

待ち続けたあの時間。

君に再び出会えた喜び。

すべて初めて味わうんだ。

ウエディングリングは、赤い太陽の欠片にしよう。

永遠にふたりで、無限の宇宙を漂おう。

僕は君を忘れない。

だから君も、僕を忘れないでおくれ。

愛おしい我が妻よ。

この砂漠の色を君にあげるから。

すべてすべて、君にあげるから。

その銀色の服の中で僕の愛を育んでくれないか。

きっと、明日が素晴らしいものになるように。

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