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2020/3/30 【本紹介①】子どもたちの階級闘争 (ブレイディみかこ氏)(Lockdown:7th day)

2020.03.30 22:00

 2016年12月。

 ドイツからイギリスへ引越した頃、前職のジャーナリストである先輩から送って頂いた本。

 

 著者は、ブライトン在住の保育士、ライター、コラムニストのブレイディみかこ氏。

 昨年「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」が、大ヒット。多くの賞も受賞され、今日本の出版界でホットな方の1人だ。


 英国を”地べた”から見つめた、

移民・貧困問題や政治情勢へのユニークな鑑識眼が面白く、頂いてから一気に読了。


 イギリスで平均収入の60%以下の家庭で暮らす子どもの数は140万人。(2016年〜17年度。=子どもの総人口の約3分の1)

 “キッチン・シンク”(台所の流し)と呼ばれる身近なものテーマとした本書では、

そんな貧困家庭の子どもとの

無料託児所での日常が綴られている。


 本書とブレイディさんのインタビューを読んで改めて考えさせられた事。


◾︎”多様性” について:

 日本でも10年ほど前から、合言葉のように”ダイバーシティ(多様性)”という言葉が取り上げられている。


 【何でもかんでも「多様性は素晴らしい!」「みんな違ってみんないい」というのは乱暴だと思います。上と下の階級の軸においては、これはあてはまらないから。みんな違ってみんないいなら、貧しいものは貧しくていい、子どもが親の経済事情で勉強できなかったとしても、お腹を空かしていてもほっといていいじゃん、人はいろいろだからという話になる。でも、縦の軸における多様性は格差と呼ばれるのであって、「いろんな人がいていい」ではなく、縮めていった方がいい。】



 (ダ・ヴィンチニュース 「誰かの靴を履いてみること」元・底辺中学校に通う息子と考える、格差や差別と向き合う日常――ブレイディみかこさんインタビュー より抜粋)



 自分は表層的な”多様性”しか見てこなかったんじゃないか。


   独、英と丸5年、2カ国で住まわせてもらったが、恵まれた駐在家族という立場。

ゆえに、その国の地べたを見過ごしていることが何と多い事か。


 昨年10月末にChildren’s Center (日本の児童館兼、簡易保健所。貧困家庭への育児支援なども行う機関)で、ローカルママ向けに整理収納(Japanese Decluttering )の無料ワークショップをやらせて貰った時のこと。


 階級や国籍、人種が様々な参加者達を前に、

唖然となる自分がいた。


 まずワークショップスタート前から、チャドルを纏った中東系ママ VS 他のママで、子どもの叱り方について激しい口論が。連れてきた子どもに厳しめに叱った1人のママを、中東系ママが虐待では?と言い出したのだ。


 口論がヒートアップする中、

何とか取りなして、ワークショップをスタート。

だが、終了直後もトラブル発生。


 貧困家庭の若いママが、同伴の子ども(友人の子どもを急遽預からなければならなかったようで)を叱り飛ばし、自分もパニックになって泣き叫び出したのだ。


 Children’s Centerのベテランスタッフさん達により何とか事態は収拾したのだが、

そんな状況を目の当たりに、

私はただ、茫然と立ちつくすだけだった。


 ブレイディさんの指摘するように、

中流クラス以上、【横軸】の中で言われる”多様性”。自分の今までのイメージは、この中だけだった。


それが、上〜下階級の【縦軸】で見ると違う。

こんなにも。



◾︎empathy(エンパシー)とsympathy(シンパシー)


【「シンパシー」は“いいね!”ボタンのように、カワイイ、可哀そう、共鳴してぐっとくる、など、自分で努力しなくても出てくる“感情”のことを言います。

 それに対して「エンパシー」は人を想像する“能力”であり“スキル”なんですよ。いいね!ボタンは押せなくても、自分と違う理念や信念を持つ人に対して、どうしてこう思ったんだろうと想像する能力のことを言います。シンパシーは感情的状態、エンパシーは知的作業といえるかもしれないですね。】

 (ダ・ヴィンチニュース 「誰かの靴を履いてみること」元・底辺中学校に通う息子と考える、格差や差別と向き合う日常――ブレイディみかこさんインタビュー より抜粋)

 ブレイディさんは、こう言う。

エンパシーを少しずつ働かせて対話することが、必要だ、と。


 シンパシーは、”resonate (自然と):共鳴する”に

近いのかもしれない。


 一方、想像力を伴う知的作業であるエンパシー。


 そのためには、まずは自分の価値観を、

今までの物差しを、0にする所からだと思う。


 エンパシーを研ぎ澄ませていった先に。

そこには、

全く新しい世界が広がっているんだと、思う。


▼「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

→「子ども達の階級闘争」にも出でくる息子さんが今やTeenager に育ち、学校での景色を書いた本。(4章分試し読み可)

▼ブレイディさんの新刊ルポ。
「THIS IS JAPAN.- 英国保育士が見た日本- 」

▼【ESSAY #3】「コミュニケーション」の本質とは?

→ドイツにいた頃。多様性の中のエンパシーについて考え始める。

#mylittlesilverlining 09_every cloud has a silver lining.



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