サツマイモにハマる/小坂ひとみ
2月9日
この冬はこれまでの人生で一番サツマイモを食べているかもしれない。
元々イモと名のつく野菜全般がもれなく好物なのだが、最近はあらゆるサツマイモを専ら焼きで食している。これが我々夫婦のほぼ毎日の日課になってしまった。
きっかけはよくある話で、「そこにストーブがあったから」。隙間の多い古い民家に住んでいるので、暖房器具は灯油ストーブ派なのだ。灯油にはそれなりにお金がかかるけれど、エアコンや電気ストーブだと、設定した温度と流れ込む寒気がせめぎ合いになってしまって、到達することのできない設定温度に向けてストーブが過剰に稼働してしまう。その割に暖かさが保ちづらく、あったまった感が少ない。灯油ストーブは空間を温めるパワーはあまりないけれど、暖かさがじんわりと体に染みるようで愛用している。
今年、そのストーブで夫がおもむろにイモを焼きはじめた。一緒に食べると、めちゃ美味しかった。それから我が家はイモを絶やしていない。
イモセンサーが発動された状態で世の中を見渡してみると、実にたくさんの品種のサツマイモが存在していることが分かる。
鳴門金時、安納芋、紅あずま、紅はるか。当社調べによると、この4種が小豆島島内で手に入る。さらにブランドで細かく分かれていたりもして、「里むすめ」とか「甘太くん」とか「紅天使」とか、期待高まるネーミングがついている。池田港の産直市場にも小豆島産のサツマイモがあるが、「サツマイモ」としか書かれていない時があり、食べながら品種を予想してみるという楽しみに興じることもある。
これまで、わたしにとってサツマイモは単なる「サツマイモ」でしかなかった。その奥に広がる品種や産地や個体差による違いを嗅ぎ分けることもなく、漠然としたイメージの「サツマイモ」を漠然と食べていた。そういうことはサツマイモに限らず他にも多々あるのかも。ひょんなきっかけで扉が開いた。
小坂ひとみ
1986年生まれ。2012年に東京から瀬戸内海の豊島に移住。
現在は小豆島在住。夫と猫とともに暮らしている。