story54.大きな自然、小さなウイルス

いまだ新型コロナウイルスが終息する兆しが見えず、このほど日本でも首相から長期戦の覚悟が必要という呼びかけがありました。このような事態に陥ると、制御しきれない猛威が際立ってしまい、日常の穏やかな暮らしがいかに有難いことかと痛感します。最前線で対応されている医療従事者の方などに感謝申し上げるとともに、感染された方々のいち早い回復や、今後感染が急激に広がらないことを祈るばかりです。

今回は、目に見えないとても微細なウイルスが大きな脅威になっていますが、もう一つの脅威としては、地球規模の異変に伴う地震や洪水などの自然災害が挙げられます。長年、地球環境問題に関わる仕事をしてきて感じることは、人間の暮らしが地球のキャパを越えていき過ぎると、必ず地球からのしっぺ返しが起こるということです。地域が限定されたかつての公害問題は、人間の知恵による技術開発や法整備などで解決に向かいましたが、自然環境破壊や気候変動などの地球環境問題は、より影響範囲が広く、因果関係が複雑であるため、いまでに解決できていないことが山積みとなっています。これらの地球環境問題の原因や影響、対策などを解明しながら、生活や経済活動とどのように両立していくかを同時並行で進めていくことになります。ただ、今回の新型コロナウイルス問題は、よりスピーディな対応が求められます。ウイルスがしっぺ返しかどうかは分かりませんが、本当に大変な難題で、国境を越えて、これまでの経験や最新の英知を結集し、一人ひとりの意識や協力によって、解決に向かっていくことを切に願います。

人間に比べて、とても大きな自然と、とても小さなウイルス。場合によっては、命に関わるほどの脅威になるのですが、逆に、生きていく上で必要不可欠な部分もあります。大自然は、食や暮らし、癒しなど多くの恵みを与えてくれます。ウイルスではありませんが細菌などごく微細な生物は、地球のさまざまな浄化や調節、人間の健康維持や増進など欠かせない働きをしてくれます。大自然も細菌も、人間が搾取し過ぎるのも、人間が制圧、排除し過ぎるのも良くないと思います。利用していることへの感謝の気持ちを持って、過度に利用しない節度ある生活をしながら、上手く付き合っていくことが大事なのだと思います。

Katsuji