完全母乳という言葉を使わない理由
私が心がけていること
それは
完全母乳(完母)という言葉を使わないことです
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この言葉を聞いたことのない方はいらっしゃらないと思いますが、言葉の由来をご存知でしょうか?
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英語のExclusive breastfeeding(乳児用ミルクなどを一切使わずに母乳だけで育てていること)からきています
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生まれてから母乳だけを飲んでいる赤ちゃんが、特定の病気にかかりにくいかどうかを調べる医学研究では、その赤ちゃんが母乳以外のものを飲んでいないかを確認します
そのための専門用語として使われているExclusive breastfeedingには、本来「完全 complete」とか「完璧 perfect」という意味合いはまったくありません
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一方、日本語の「完全母乳」には、どこか違ったニュアンスが含まれるように感じられることもあると思います
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さまざまな理由でミルクを併用している場合でも、母乳を飲ませ続けることで、健康への恩恵は大きくなります
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母乳育児を取り巻く状況は、一人ひとり異なります
出産前後、母乳育児がしやすい環境や適切な支援・情報が得られたかどうか、継続してサポートを受けられたか
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授乳だけではなく子育ては、数学のように最後たった一つだけの正解にたどり着くものではありません
100人いれば100通り、そのお母さんと赤ちゃんの歩みがあると思います
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そこに「完全」という言葉を当てはめるには、やはり難しいものがあるのではないでしょうか
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また、「母乳にこだわる」といった言葉もよく耳にします
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「赤ちゃんに母乳をあげたい、できれば母乳で育てたい」
多くのお母さんが、そのように感じています
日本では、妊娠中の93%以上のお母さんが母乳で育てることを希望していますし、世界保健機関(WHO)では、生まれ育つ国や家庭の経済的な環境にかかわらず、生後半年までは母乳だけ、そしてその後は栄養を補完する食べ物をあげながら2歳かそれ以上まで母乳育児を続けることを推奨しています
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またさまざまな研究から、一生のうちで飲んだ母乳の量が、健康と発達に影響することも明らかになっています
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わが子のためにできる限りのことをしてあげたいと感じるのは母として自然な思いであり、願いだと思います
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短期間でも母乳をあげること、混合でも母乳を続けること、これも立派な母乳育児
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プレッシャーに感じたり、こうでなければならない、こうしなければならないという思いを抱えることなく、わが子がかわいい、赤ちゃんといる時や母乳をあげているときが幸せ…そう感じることのできる子育てであってほしいと思います