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ティール組織時代に求められる上司力とは。上下関係のない企業が増える昨今、従来型組織の管理職が身につけるべきこと

2020.03.06 02:20

こんにちは、前川由希子です。10年にわたり、人材育成・組織活性のサポートをしています。この10年、時代の流れとともに、組織のあり方や求められる人材も変化してきました。

たとえば、2014年頃に出てきたティール組織という概念。トップダウンではないフラットな組織体制のもと、各メンバーが裁量をもって能力を発揮することで目的達成をめざす、次世代型の組織として注目を集めています。

今回は、ティール組織のように上下関係のない組織づくりをする企業もでてきた昨今、従来型組織に所属する管理職の方が磨くべき上司力とはなにか、お話していきます。


■人材育成は、「自律型人材」を育てる方向へシフト

ティール組織とは、自律型人材の集団。権力がどこか1つに集中することはなく各メンバーに分散されており、それぞれが自主経営を行っている組織です。

日本において、完全なるティール組織というのは、まだまだ少ないのが現状です。しかし「主体性のある人材を育てたい」というニーズは高まっており、人材育成は「自律型人材」を育てる方向へシフトしていくことが予想されます。

その背景にあるのは、人口減少のすすむ日本が直面する人材不足という課題です。丁寧な研修を行う時間やリソースの十分な確保が難しいとき、企業として育てたいのは、上司の指示を待つ人材ではなく、自分で考えて動くことができる「自律型人材」なのではないでしょうか。

そこで、上司の役割にも変化が見られます。従来型組織では「いかに指示をわかりやすく出し、部下を納得させ、動かすか」がポイントとなっていた上司力。これからは「いかに自律型人材を育てるか」が鍵となります。

急に方向を変えることは簡単ではありませんが、段階を踏み、自律型人材の育成に取り組んでいきましょう。


■自律型人材の育成において、上司が身につけたい「よい質問力」

今、従来型組織で管理職を務めるみなさんに身につけていただきたいのは、「よい質問力」です。部下が自分の頭で思考を深められるよう、トスをだすイメージですね。

たとえば、部下に対し、今期の目標を立てるように指導するとき。ただ、「目標を考えておいてね!」ではなく、「1年後、どんな姿になっていたい?」「では、今はどこにいる?」「そのために、明日から何ができる?」と、考えを深めるきっかけとなる質問を与え、部下の脳を刺激してほしいのです。

ポイントは、感情とセットで考えさせること。なりたい姿を想像させるとき、「そこに行けたらどんな気持ちになると思う?」と投げかけてみましょう。

人はワクワクを感じれば、自発的に行動ができる生き物。みなさんも、おいしそうなレストランを見つけて心がおどったとき、自然とその場所を調べる、予約をするなど、行動を起こしていますよね。

同じように、部下が目標を立てたとき、「おもしろそう」「楽しそう」という感情がわけば、実際の行動につながりやすくなります。よい質問力を通し、ポジティブな感情が生まれるよう導いていきましょう。


■「自分で考えて、行動する」を体感できるトレーニングの場を与えよう

従来型組織で経験を積み、「上司の指示を的確に遂行すること」に比重をおいた働き方をしてきた部下は、自発的に考えて動くことに不慣れな傾向があります。よって、「自分で考えて、行動する」というプロセスを何度も繰り返し、自分のものにする必要があります。

ここで上司の腕の見せどころとなるのが、いかに部下にこのプロセスを経験できる場所を与えられるか。部下がトレーニングできる場所を、意識的に提供してください。

たとえば、社内会議の場。若手が発言をしない風潮の職場であれば、「あなたはどう思う?」と部下に話をふり、空気を変えていきましょう。最初、部下は戸惑いを見せるかもしれませんが、そんなときは、先ほど紹介した「よい質問力」でサポート。

そして、部下が意見を出したら、「アイデアを出してくれてありがとう」と受けとめ、フィードバックを返しましょう。「正解のない問いに対し、アイデアを出すことはおもしろい」と印象づけていきます。

また、部下が自分で考えて行動するとき、「あれはやめたほうがいい」「もっとよいやり方がある」など、ついつい口出しをしたくなってしまうかもしれませんが、ここはひとつ我慢。そっと見守りましょう。

代わりに上司ができることは、「どんな結果になっても、私が責任をもつ」と逃げない姿勢を見せることです。そうすれば、部下は思いっきり挑戦し、そこから成功体験を積み、失敗からの教訓を得ることができます。

子どもが自転車に乗るとき、まずは補助輪をつけてたくさん練習をし、感覚をつかめるようになったら、補助輪なしで乗れるようになりますよね。それと同じで、従来型組織で働いてきた部下が自律型人材になるために必要なのは、自分で考えて行動するプロセスを繰り返し、感覚をつかむことです。

最終的には上司の助けがなくても、部下が自律型人材として活躍することがゴールですが、それまでは上司がトレーニングの場を整備していきましょう。

人材不足という課題に向き合いながら、チームの生産性を上げるためにも、ぜひ、自律型人材の育成に注力されてみてください。