肺
最近、精神的に落ち込んだ方を診察することが多いのですが、そういう疾患をもっている人は、なぜか共通点があります。
大胸筋が縮み(以前から書いていますが、この時に大胸筋という表現をするのは、筋肉が緊張するという意味ではなく、位置的な意味で使っています)ます。
筋肉が収縮する状態を観察するのは簡単です。大胸筋部を摘んでみると、肩甲骨が前方転位しつつ内転下制気味になった時に大胸筋は緊張しやすくなります。しかし、肩甲骨だけを動かしてもあまり大胸筋は緊張しません。
つまり胸を丸めただけでは大胸筋はあまり緊張しません。上腕骨を内転しながら肩甲骨を前記した位置にすることで、緊張するのがわかります。ボディビルダーがポージングをした時のイメージがわかりやすいかもわかりません。
ここで重要なことは、肩甲骨の位置と上腕骨の位置関係が重要なことに気づきます。タイトルに肺と書いたのは、胸部には心臓や肺があるからです。
肺の機能が落ちると七情の「悲」に陥りやすいと古典には書かれています。悲しみすぎると肺を傷めるということです。どちらも同じ意味だと思います。
精神的に落ち込んだ人=「悲」かどうかはわかりませんが、背筋をピンとして落ち込んでいる人は見かけません。だから胸が縮むというような表現をする訳ですが、実際には胸が縮んだだけでは、大胸筋部は緊張しないということを意味しています。
上腕骨が内転して、肘関節が屈曲位にあり、手首を屈曲させると容易に大胸筋は緊張します。逆に、このような緊張がある時に背筋を伸ばしたり、肩甲骨を開くような動作をさせるのは危険だということがわかります。まぁガチガチになって絶対に開きませんけどね。
精神的に落ち込むと肩甲骨や上腕や前腕が協調しあって緊張するのです。つまり単一の筋肉が緊張するのではなく、複数の筋肉が緊張して見かけ上、いわゆる巻き肩と呼ばれるような姿勢になるということです。しかし、巻き肩=大胸筋=精神疾患という図式にはならないということです。
また大胸筋の上腕部の硬さは、筋肉が収縮しているのではないということです。
その他にも三角筋の前部、上腕二頭筋の上部です。つまり脇の下あたりの緊張ということです。くれぐれも間違えて欲しくないのは、これらの筋肉が収縮して緊張しているという訳ではないということです。
この緊張は、確かに筋肉が緊張しているようには見えるのですが、筋肉が縮んでいるだけで硬くなっている訳ではないので、これを誤解すると、この緊張はなくなりません。
つまり揉んだりストレッチして引っぱっても緩まないということを意味しています。
大胸筋の上腕部の緊張が強くなると、呼吸量が少なくなります。しかし、精神的な症状を訴えている人に呼吸量の違いを聞いても自覚することはありません。なぜならそれが日常的だからです。
緩んでみてはじめて、こんなに呼吸って入るんだと理解してくれます。
続きます。