黒王妃の戦争11-向う傷の男ギーズ公アンリ
2020.04.05 11:51
アンリ3世が戴冠したからといって分裂したフランスの状況はいっこうによくならない。それどころか分裂は宮廷にまで及び、皆服の下に鎖帷子を着こみ、自分達のボディガードに囲まれていなければ歩けなかったほどだという。もはや国家会議どころではないのである。
前王シャルルに追い出されたモンモランシーの息子ダンヴィルは、新教派と相互提携を結び、南仏連合が王家から独立してしまった。かつてない王権の危機である。さらにパリを飛び出した王弟アランソン公がダンヴィルと組み、新旧どちらでもない政治優先のポリティーク派をつくり、王家改新を求めた。
王家の側では、コンデ公の軍を食い止めた、カトリック戦闘派ギーズ公アンリがパリの救世主として勢力を強めた。彼はこの戦闘で向こう傷をつくり、父と同じく「向こう傷のアンリ」と呼ばれて民衆の人気を集めた。新王の威光などまるでなくなったのである。
そしてついにナヴァール公アンリもパリを脱出してまた新教に改宗。この状況で動いた王母カトリーヌは1575年5月自分の美女軍団と法律顧問を連れて、アランソン公と会い、信教の自由を拡大し、国難突破のための全国三部会の開催を決めた。しかしこれを敗北と見るギーズ公はカトリック同盟を結成する。
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