Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

青と檸檬

blue flower

2020.04.05 13:25

ぼくの頭の中に広がっている海の中に、きみの声がおちる


ベルーガは灯台を越えて先へ


貝殻になったいくつかの夜が、爪先をかすめて波間へといそぐ


心臓の中にはいつだって夕暮れがつまっていたし


それが恋だと気づくには、あの子は少しばかり歩きすぎていた


「砂浜に咲くのは白い花だけだよ」


そのくちづけはあの青い花柄のスカートに似ていた


にんげん、と


呼ぶにはあまりに透き通りすぎていたあのときのぼくらは


ただ、お互いのかたちを確かめ合うのに夢中で


結局は水面越しに手を繋ぐことさえ、


できずに




「そうだなあ


鴎はもう行っちゃったけれど


つぎの誕生日にはきっと


青い花を、贈るよ」