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うさねこまったり

病気と私 10

2020.04.05 14:53

誤字脱字を含め本文のおかしなところは、随時修正していくつもりです。

お気づきの点などありましたら、どうかコメント欄で教えてください。

よろしくお願いします。


1976年~1977年

(小学校4年生~5年生)


----- インヒビター(Inhibitor) -----

(第8因子製剤に対する抗体)


自転車で大怪我をし大量の血液製剤を使用したことにより、第8因子製剤に対する抗体(インヒビター)が発生してしまった。

血液製剤に対しては、使用当初からアレルギーで、蕁麻疹が時々出ていた。ポツポツと小さな発疹が出てくると、それが全身にひろがり、ポツポツの間隔はやがて完全に埋まってしまい、全身が浮腫(むく)んだような状態になった。

こうなると、たいていは肩に筋肉注射を打たれたが、薬が効いたと思ったことはなかった。

ある時、あまりにひど状態になり、看護師長が薬を持ってきて、少し強い薬を使うから体が熱くなるよと説明され、口を開けて息を吐きなさいと言われて、静脈から薬を入れられたことがある。

言われたとおりに体があつくなり、口からなにかプハーッと出たような感じになったのだが、数分で効果を発揮して、あっという間に蕁麻疹が引いてしまって驚いたことがある。


今から考えると、血液製剤を使用して蕁麻疹が出たりしていたのは、病棟に10人以上もの血友病患者がいる中、私一人の症状だったことを考えると、私の体には製剤を受けれない何かがあったのだろうと思う。

蕁麻疹が出たり出なかったりした理由は、おそらくは私の体調のせいによるものではなかっただろう思う。当時の製剤は、人血から作られており、一本一本の製剤の色が違うものであった。

色が違うということは、中に入っている成分も、個体によって違っていたということだ。今の製剤との量の違いから考えても分かることではあるが、ほとんどの成分は、第8因子以外のものだったのだ。

インヒビターの発生が分かったのは、その後の治療において、関節内出血の際に製剤を使っても、出血が止まらないという状態が何度も続いたからである。

注射を使わない状態で、一定時間ごとに採血を行い血液の凝固時間を調べ、製剤を点滴してから同様に凝固時間を調べる検査を行った。

何度も何度も採血されて、注射には慣れていたが、さすがに針を刺されるのが嫌になった。もちろん、治療者側としてはそんな都合にかまっていられる状態ではなかっただろうが。


そして、製剤を使用しているにも関わらず凝固時間が短縮されないことから、インヒビターの発生を疑い、大学病院で検査した結果、製剤の効果が得られない理由が「インヒビターの存在」とはっきりとわかることになる。

インヒビターの発生後、血液製剤の使用は一時中止され、定期的な血液検査によりインヒビターの状態を観察することになった。

(これ以降、本当に何度も何度も採血され、平気な顔はしていたが、本当はものすごく針を刺されるのが嫌になっていた。余談ではあるが、現在は注射用の針が細くなっているが、当時の注射針は今見るとぞっとするような太さがあった。)


インヒビターは、時間の経過とともに少しずつ下がっていき、3ヵ月以上使わなければ、数値は2程度まで下がることが分かった。(数値が1で2倍、2で4倍の量の製剤をつかえば、インヒビターがない状態と同じ効果が期待できる)

それ以降は、使用を中止し続けてもインヒビターの数値が1以下になくなることはなかった。

次に、数値が減った所で製剤を使用し、時間ごとに採血を行ってインヒビターの数値を計っていった。

結果は、一度使うと、一気に高い数値になってしまい、数時間後に二度目の製剤を使用するという治療は望めないことが分かった。

そして緊急時に第8因子製剤が効かないことは命にかかわるとして、この時より普段の関節内出血程度では、製剤の使用をしなくなった。

また、一回の使用で効果を得なければならないため、使用する単位も4倍以上の量を使うことになった。


内出血しても薬は使ってもらえない。こうなると、病院にいても治療してもらえるという考えは全くなくなってしまった。

そんな状態になっても、何もしないで寝ているわけにもいかず、これまでの生活を変えることもできなかった。

私は、内出血を起こすと、止血をするために患部を弾性包帯できつく巻いて痛みに耐え、関節内で圧迫止血を行うということをやり始めた。

誰に言われたわけでもない。どうせなにもしないで放置しても、パンパンに腫れるだけ腫れないと止血しないのだから、その状態を、もっと早く作れば早く止まるんじゃないかと考えたのだ。


内出血による痛みはとても酷く、ほとんどの場合は我慢しきれるものではなかった。あまりの痛さにきつく巻いた包帯を少し緩めると、ほんとうにわずかだが痛みが和らぐような気がした。すぐにきつく巻きなおすのだが、緩める前よりさらに痛みが増す。

何度かやっているうちに、結局パンパンに腫れあがってしまい、包帯が巻けなくなってしまうのだ。

それでも、効果があって、あまりひどくならないうちに、止血してしまうこともあったのだ。

つまり、どれだけ包帯を緩めずに我慢できるかが勝負ということだった。

分かっているのだ、どうせ今包帯を緩めてわずかに痛みが和らいでも、すぐに我慢できないほどの痛みがやってくることを。

しかし、時計を見ながらあと30分頑張ろう、とか、いや、せめて10分だけでも頑張ろうと思っても、時計の針はさっぱり先に進まないのだ。


看護師から見れば、私の関節内出血は日常的なもので、本人が痛いのを我慢すればいいだけのことで、それほど大騒ぎするようなものではなかったのだろう。私は怒られるのも嫌だったし、何の治療もしてもらえないことも分かっていたので、一人で痛みに耐えるだけの治療をしていた。


血液製剤が効かなくなってしまったことを、ずっと後悔し続けた。

私の中では自業自得だったのだ。

関節内出血の痛みを我慢している時、何度も何度も同じ事を考えながら後悔し続けた。

「ブレーキがもっとギュッと効けば」「あの時、変なプライドを出さなければ」と、


高校2年生になると、インヒビターのある患者に対して、第9因子製剤(プロプレックス)が効果を発揮する場合があるということで、西多賀病院に入院しながら、第9因子製剤の投与とインヒビターの数値の検査を行った。その結果、第9因子製剤の使用においては、インヒビターの数値が上がらないことが分かった。

使用する量は、通常の4倍であった。

出血時に何度か使用すことになるが、効果は確かにあった。ただ、第8因子製剤を投与した時のような、打って数時間で効果を発揮するというものではなかったので、基本的には、関節の圧迫止血をしつつ、製剤を使うということで、その後20歳になるまの数年間をこの状態で過ごすことになる。


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