万代太鼓
大学時代の朋友の一人に前田家家老の末裔だと「自称」する御曹司がいて、未だ落ちぶれることなく祖父の代に創業した会社の三代目社長を継いでいる。地元のちょっとした顔役らしく繁華街などでも「若」などと呼ばれるもんだから回りが振り向く。「随分な御身分で」と冷やかせば「名前で得している」と本人、単に苗字にそちらが付くだけの話で...。
北陸初、というか日本海側で初めての政令市は新潟市だと御当地は胸を張るけど合併に合併を重ねたせいか兎にも角にも広い、というか「過ぎる」。一方で伝統や文化にこだわり独自路線を歩んだこちらは対照的ながら未だ多くの観光客が訪れる。数年前でさえ外国人観光客がホテルのロビーにあふれていたのだから北陸新幹線の開業後はさぞ...と聞けば鈍化はせぬものの、やはり日帰り圏内になったことで宿泊は横ばいとか。
殿様は当時全国から職人を呼んだから市内各所に地名が残り、その名残と思しき近江町市場は金沢の台所にて魚介を中心に旬な食材が並ぶ。そんな市場の入口にはこれ見よがしにあの看板があって美観云々はあるにせよ朝から鮨が食えるってのは贅沢そのもの。
魚介といえば高級魚として名高い「のどぐろ」は御当地の名産。確かに「旨い」とは思うのだが、美食家の私にはやはり脂ののったトロこそ贔屓なだけにあの選手の一言に流されているだけではないのかと詰め寄れば「あれは旨いぞ」と三代目。握り以上に焼きが絶品だというからならば食わせろと二軒目に案内いただいたものの品切れにて、「また次回ナ」と冷たくあしらわれてしまった。
さて、作家の百田直樹氏の「この名曲が凄すぎる」の一作目が確かこの曲のはずなんだけど、少し前に「ペール・ギュント」全曲を聴いた。ヘンリック・イプセンの戯劇に北欧のショパンことグリーグが曲を付けたもので、途中、誰もが聞き覚えのある旋律が登場する。放蕩息子ペール・ギュントの旅路を描いた作品にて、息子を心配しつつ永遠の眠りにつく母を描いた「オーセの死」も名曲の一つ。
今日は母の日。どうやら地方の銘菓、中でも言わずと知れた仙台銘菓「萩の月」がお気に入りだそうで。大間のマグロが築地市場ならば全国の銘菓は都内百貨店。まぁその位の手間は惜しむものでもなく、帰りの「ついで」に立ち寄ればそれだけがない。全国銘菓の中でもこの「萩の月」と「博多通りもん」だけが御当地のみの限定販売だとか。折角の販売機会を逸するとは...否、無いと余計に入手したくなるものでその希少性が更なる魅力に繋がる。敷居は下げぬとの製造元の姿勢が孤高を貫く金沢市に重なった。