ええじゃないか(富士急ハイランド)
長さ1153m/高さ76m/最高速度126km/h/最大傾斜89°
S&S Sansei Technologies/4th Dimension
2016年7月、富士急ハイランドに登場したS&S社製の4次元コースター。導入されたのはアメリカの「Six Flags Magic Mountain」の「X」に続いて2機目。その後も、中国の「China Dinosaurs Park」に「Dianoconda」が導入されたのみ。世界でも3機だけの希少なコースターになっている。設計したのは、RMCの躍進でコースター界のカリスマとなったアラン・シルキーだ。
「ええじゃないか」というネーミングは絶妙だと思う。はっきり言って、コースターにつける名前としては違和感がありすぎるのだが、なんと言っても1度、聞いたら忘れられないインパクトがあるし、実際に乗った時の規格外の激しさにも、どこかマッチしているように感じる。その名に合わせて、待ち列や乗り場は和のテイストで作られている。少し過剰な、外国人が考えたような日本の雰囲気だが、そこが好きだ。もちろん、外国人観光客が多いことも念頭に入れているのだろう。
4次元コースターは座席が車両の左右に取り付けられており、レールからはみ出している。その為、乗り場が左右に分かれており、待ち列の途中で、左右のどちらに進むかを選ぶことができる。もちろん、左か右かによって大きく乗り味も違ってくるので、両方とも乗るべきだろう。また、同じ座席でも内側に座るか、外側に座るかによっても、大きく変わってくる。レールからアームがはみ出す形で座席が取り付けられているので、当然、外側の方が動きが激しく、振動も強い。個人的には、内側の方が乗りやすくて好きだが、ここは好みが分かれるところだろう。
車両は左右に2人ずつ、4人乗りが5両編成となっている。コースターの規模にしてはキャパシティは少ないが、車両1つ1つがとても大きく、乗り場で見た時のインパクトは大きい。乗り場には3つの柵で囲われた枠があり、10人ずつのグループに分けられる。つまり、乗り場に着いた時点で、次の次の車両に乗ることになる。枠の中にあるロッカーに荷物を全て預け、靴も必ずここで脱がなくてはいけない。激しい回転を行うので、安全装置もかなり厳重だ。観音開きになったハーネスに手を通して、リュックを背負うように閉じる。スタッフがハーネスを押し下げて、肩の高さに合うように下ろして、体にフィットさせる。シートベルトは3ヶ所あり、それら全てに付けられた黄色いベルトを引っ張って確認する必要がある。当然のように、時間がかかる。1台の発車に5分はかかるだろう。ほとんどの場合、2編成で運転しているが、走行時間が2分ほどなので、最悪の場合、ブレーキゾーンで3分近く待たされることになってしまう。これはかなり冷めてしまう。「ええじゃないか」で1番のマイナスポイントだ。
巨大な車両を支える為、レールもかなり大きい。しかも、このレールが二重構造になっている。車両本体の走行を支えるメインのレールと、座席の回転を行うガイドレールだ。ガイドレールがメインのレールに対して上下に移動することで、座席に付いたギアと連動して、回転させる仕組みになっている。その為、何度乗っても、同じタイミングで同じ回転をするようになっている。
唐草模様の大きな駅舎
上下反転させた「え」を組み合わせたロゴが良い
外の待ち列
ここまで並んでいたら諦めるべき
屋内の待ち列
この先で左右を選べる
乗り場前のスロープになった待ち列
和風でまとめられた乗り場と巨大な車両の様子
反対側の乗り場から見た様子
天井に描かれた「え」のロゴがカッコいい
足元のプラットホームが下がると、乗り場から後ろ向きに出発する。右に旋回しながら、座席が回転し、足が真上に来る。まずは小手調べというところか。少しリクライニングしたような態勢に戻り、巻き上げを上っていく。上半身が完全に固定されているので、後ろを見ることができず、どこまで上るのか全くわからない。一方、足はブラブラで、支えになるものがない。空を見上げながら、ゆっくりと上っていく。先が読めなすぎて、これ以上ない不安に襲われる時間だ。
最頂部に着くと、小さなプリドロップがあり、座席が回転。思わず「うわぁぁ」と変な声が出る。目線が真下に来たところで、傾斜89度、ほぼ垂直のファーストドロップとなる。不謹慎な話だが、飛び降り自殺というのはこういう感じなのだろうかと毎回、思ってしまう。それぐらいの恐怖だ。もちろん、これはコースターなので、地面に着く前に、車両が再び回転し、背面で体を受け止めるような形となる。時速126キロに達するので、とんでもないプラスGがかかってくる。そのまま、インサイド・イレブンターン。下から上へと掬い上げるような形で半ループする。ここの感覚はまさにSFの世界。ジェットパックを背中に付けて、空へ飛び上がっていくような感覚だ。ターンの頂上からドロップしながら、更に1回転。かなり激しくて、苦しささえあるパートだ。
乗り場を出ると、右へ旋回し、巻き上げへ
巨大な巻き上げ
園外にまで巻き上げの音が響く
巻き上げを真下から見た様子
走行距離に対して高すぎる気もする
最頂部にあるプリドロップ
遠くから見ても、印象的な形
プリドロップで座席が回転し、真下を向く
ほぼ垂直、大迫力のファーストドロップ
地面に叩きつけられるかのような感覚
ファースドロップの最下部
レールの大きさがよくわかる
メインのレールとその間に回転をガイドするレールがある
巨大なインサイド・レイブンターン
園内の動線に一番近い
続いて、フルツイスティング&フルフロントフリップと公式では呼ばれるエレメント。これだけだと意味がわからないので、簡単に言うと、ゼロGロールの間に座席が1回転するエレメントだ。ゼロGロールの回転に合わせて、座席が360度回転するおかげで、体が逆さまにはならず、レールの周りを絡みつくように動くという4次元コースターでしかなしえない不思議なエレメント。足が支柱やレールに当たりそうで、思わず足を上げてしまう。ジェットパックの次は、さながら宇宙遊泳。個人的には「ええじゃないか」で一番好きなパートだ。その後、大きく左にオーバーバンクターン。ようやく、ちゃんと前向きに進む感覚が味わえる。映像などで見ていると、他に比べて地味に見えるパートだが、実際に乗ってみると、全く気にならないどころか、スリル満点だ。
フルツイスティング&フルフロントフリップ!
見た目はまさにゼロGロール
内側から見た様子
エントランス前に悲鳴が響く
もはや訳がわからない動き
足が支柱に当たりそうで怖い
大きく左にオーバーバンクターン
高速で駆け抜ける車両
パークの端にあり、すぐ向こうは住宅街だ
ターンの後半は駅舎スレスレの所を走る
続いて、ハーフツイスティング&ハーフバックフリップ。またよくわからない名前だが、基本は先ほどと同じで、ゼロGロールをしながら、座席が回転するエレメント。ただし今回は座席が180度だけ回転する。半回転なので、最終的には座席が前向きから後ろ向きに戻る形となる。更に畳み掛けるように、アウトサイド・レイブンターン。小さめの半ループを上から下へ回転せずに進む。最下部ではまた前向きになっているので、レール自体がツイストし、座席も半回転して、通常の態勢に戻り、ブレーキとなる。最後は怒涛の展開で、かなり無理があってシンドイ。スピードが残っている割にはエレメントが小さいので、動きや振動があまりにも激しすぎるように感じる。ブレーキしながら、また真下を向くというおまけも付いてくる。
ハーフツイスティング&ハーフバックフリップ!
同じようなゼロGロールだが、半分ぐらいの大きさ
パーク側に戻ってきて、アウトサイド・レイブンターン
最初のレイブンターンの半分以下の大きさ
速度に対して小さすぎるので、かなり激しい動き
大きなブレーキゾーン
勢いはまだまだ残っている
「ええじゃないか」は4次元コースターの中でもベストに上げられることが多いコースターだし、日本国内でベスト級のコースターなのは、疑いようもない事実だろう。だが、個人的には過激すぎるようにも感じる。富士急の4大コースターの中で、リピート回数が一番少ないのも事実だ。また、運の要素が強いのも、僕の中でのハードルを上げている。左側か右側か、何両目に乗るか、座席の外側か内側か、赤、青、黄、緑、どの車両か、その日の天気、時間。全てのコンディションによって、乗り味が大きく変わってくるのだ。乗る時によって「間違いなく最高のコースターだ」となる時もあれば、「痛すぎてもう嫌だ」となる時もあるので、一種の賭けのようでもある。