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松浦信孝の読書帳

レジャード随想

2020.04.11 06:03

古き良き時代を体現したようなカラオケスナックが、北千住にある。



名前を、レジャードという。集う場所、というような意味だそうだ。


このスナックを知ったのは、吉満さんが開催した「本と酒」のイベント。


チャージ代わりに本を一冊、あとは歌い放題、という不思議な空間で僕も気付けばステージ上で熱唱してしまっていた。


その時の写真がこれ。目線が上向きなのはステージ正面の店の奥にもディスプレイがあるから。


友人や職場の人と飲んだときに歌うこともあったけれど、あんまり知らない人の前でカラオケを歌うのは新鮮な経験だった。


そして結構自分が人の注目を浴びて歌うことが好きなんだって事にも気付いてしまった。


それから、レジャードに行くために、北千住に行くことが増えた。


身近な友人とのカラオケでは絶対に歌わないレパートリー、布施明、郷ひろみ、尾崎紀世彦など。


自分の普段出せない自分を、出す場所としてレジャードはかけがえのないものになった。


米津玄師も、髭男も良いけれど、この空間には昭和の名曲が似合う。



レジャードの紹介に移る。


北千住駅西口前の大通りをまっすぐ進んで、左手に見えるツタヤを過ぎた次の交差点を左に曲がると、路地の奥にひっそりと光る紫色の看板が見えます。




外壁とドアのスペルが若干異なるのはご愛嬌。開けにくい漆黒のドアの向こうには、ここだけ昭和の時代に取り残されたような、優しい空間が広がっています。



ドアを開けると、ママとボーイの林さんが優しく迎えてくれます。(自分からすると祖母と父親くらいの年齢です。それがまた嬉しい。)


ベルベットの美しいソファが、くすんだ壁に妙に合っていて、温かい雰囲気を醸し出します。


デビュー前の尾崎豊が通ったと言われる、この店。音響へのこだわりが半端なくて、とても気持ちよく歌える。


料金体系はお通し500円、ドリンク1杯700円、ボトル4500円、歌う毎に1曲100円となっている。


スナックとか入り慣れないから高かったらどうしよう、という人にも優しい。


ステージ後ろには、営業やお散歩番組で数々の有名人が訪れた際のサインが飾ってある。


ドラマの撮影にも何度か使われているらしい。「主に泣いてます」「銭の戦争」「ストロベリーナイトサーガ」「リーガルハイ 最終回」「積み木くずし」等だそうだ。



ママが、昔はラーメンもやってたのよ。と教えてくれた。食べてみたかった。残念。

今でもあるフードメニューはカツサンド。名物料理である。これがとても美味しい。行ったら毎回頼んでしまう。



そんなレジャードも、コロナショックを受けて、廃業を考えているとのこと。


この場所を残したい。ママがいる限りいつまでも続けていて欲しい。そう思って思いの丈を今回は文章に託した。


新型コロナの脅威を乗り越えたあと、また皆で歌いに行けるように、ささやかなる願いを込めて。