圧倒的な集客力を持つ「ブライアントパーク」を支えていた仕組み”BID”とは。大都会の小さなオアシスには年間1200ドルの収入が!
こんにちは!ニューヨークでコリビング(Co-living)ビジネスを展開する「Crossover」が提供する、起業家支援プログラムに参加している増澤望美です。
起業家支援プログラムついては、プレスリリースをご参照ください。
ブライアントパークはタイムズスクエアからほど近い、ミッドタウン地区のオフィスビル街にある、都会のオアシス的存在の公園です。面積は2.4haでありながら、年間約1200万人が訪れます。
わたしが訪れたときにはスケートリンクや飲食店が設置され、たくさんの人で賑わっていました。なぜ多くの人が集まる公園なのでしょうか?それにはBIDという仕組みがありました。
地域を活性化し、付加価値を生むBID制度の仕組みとは
BID(Business Improvement District)とはニューヨークでも多くの地域で取り組まれている、地域活性化を支えるための仕組み(※1)です。
それぞれの地域にはBID団体があり、清掃や警備、開発などを行うことで、地域への付加価値を提供しています。
ベースとなる地域の歩道設備、管理などは行政が担当していますが、それだけでは十分な予算は取れません。
そこでBID団体が自助力で管轄エリアの清掃を行い、設備をグレードアップさせたことで、質のよい場所作りと地域の活性化を行っているのです。
年間1200万ドルの収入。イベントやプロモーションにも積極的なBID団体の工夫
BID団体の財源としては、まず地域の地主さんや不動産所有者などが、その地区内の土地、建物の固定資産税に上乗せして支払う、行政への負担金があります。その負担金はそのまま、行政からBID団体に運営資金として支払われます。
そのほかにも、寄付や行政からの補助など、各BID団体により財源調達方法は違うようですが、ブライアントパークの場合はその収入額、1200 万ド ル(約 13 億円)とのこと……!
内訳は、年間1000件ほどのイベント使用料や、キオスクなどのテナント収入、企業のスポンサーシップ料など。さまざまな収入源が行政から支払われる運営資金を大きく上回っており、潤沢な資金を得られているようです。
またスケートリンクにも、「Bank of America」というスポンサー名を、見つけることができました。小さな公園の中で数えきれないくらいの企業と、大きなお金が動いていると思うと、とても興味深いですね。
いつも安心できる、清潔な公園。清掃と治安維持のための豊富な人材配置
いつ行っても草木が整えられ、ゴミひとつ落ちていない、清潔さや品のよさを感じられるブライアントパーク。
活動資金のうち約15%は、美しく安全な公園を保つために使われています。
ふつう、行政だけの公園管理予算であれば、2人の清掃作業員を配置させるのが限界です。公園内でセキュリティーと頻繁に会うこともありません。
しかしブライアントパークでは、BIDによって清掃のために約30人、また24時間2人体制で警備を行うための人材を直雇用しているそうです。そのため常に公園内をセキュリティーがいて、話しかけたときも親切に対応してくれたので、安心して過ごすことができました。
いちばんの驚き!生花が飾られクラシックが流れる美しすぎるトイレ
通常公園のトイレをおすすめすることはないと思いますが、ブライアントパークのトイレは別格です。
目の前を通るたびについつい、寄ってしまうほど。トイレの美しさも、人を集めるために大切なことであると感じさせられました。
入口にはなんと大きな生花。ここはホテル!?と思うほどの豪華さです。トイレ内は冷暖房完備で年中快適であり、耳に入ってくるのは上品なクラシック音楽。ほのかにいい香りも漂ってきます。公園にあるトイレのレベルとは思えません。
また、わたしが行ったときには必ず清掃スタッフがいて、手洗い場の周りには一滴の水滴さえ残っていませんでした。清掃スタッフ全員にチップを渡したいと思うほど感動を覚えたのは、はじめてです。
ニューヨークの小さな公園で圧倒的な集客力を生み出したBID。心地よさを感じるスペースを提供し、自然と人が集まる場所をつくることのできる事例を、実際に見ることができました。
(※1)大阪版BID制度検討会
https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/cmsfiles/contents/0000402/402593/daiikkai-hosokusiryou1-6P.pdf