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タイという国はお寺と屋台でできている

2016.03.18 08:09

1週間ほど,タイに行ってきました。
昨年もちょうど同じ時期にカンボジアに行っていましたが,今度はお隣の国です。

今回は社会事業大学の先生方の児童福祉システムの国際比較研究の一環として行かせていただきました。
同行させていただいた社会事業大学の有村先生からは旅の途中,いろいろなことを教えてもらいました。
有村先生の専門は社会福祉。これからの児童福祉施策は有村先生が中心になって作っていくんだろうなと思います。


今回の旅ではカンボジアで見えていた子どもたちの問題がまた違った角度から見えて面白いなぁと思いました。また,今回はタマサート大学の先生にアテンドしてもらい,通訳の方もいらっしゃったので細かいところまでタイの児童福祉が理解できました。
東南アジアと聞くと,どうしても日本よりも遅れているという印象を持ってしまいがちですが,決してそんなことはありませんでした。むしろ,日本が見習うべき点もたくさんあると感じる旅でした。

現地,5日間の滞在で9ヶ所の機関,施設を回り,それぞれ2時間以上のインタビューをしていたのでとても濃い時間でした。今回訪ねたのは,日本でいう厚生労働省の児童福祉局のようなところや日本でいう情短施設や児童養護施設,児童相談所のようなところ。それから,児童保護に取り組む民間の団体でした。

タイで特徴的だったのは,まず子どもたちを取り巻く環境でした。
虐待が多いというのは日本と同じですが,特に性的虐待が多く,虐待ケースの8割,9割が性的虐待だという統計があるそうです。また,虐待などの問題と関連して,貧困の問題も多くありました。貧困の背景には,周辺国からの移民や無国籍の子どもたち,人身売買などの問題もあるようです。
昨年,カンボジアに行ったときにも子どもたちの姿をたくさん見てきました。カンボジアでも人身売買から子どもたちを守る取り組みが行われているようでしたが,タイでは実際に売られてしまった後の子どもたちの保護や支援が行われていました。人身売買された子どもたちは観光地などで物乞いをし,そこで得たお金を搾取されているということで,人身売買は性的虐待や搾取,児童労働などいろいろな問題の根底にある問題のように感じました。

また,地方によっても起きる児童の問題には特徴があるようでした。
行く前に予習した本で読んだところによると,タイは中央集権の傾向が強く,地方分権が進みにくいということでしたが,確かにそうした傾向があるように感じました。その分,児童保護においては,地方行政よりも民間の団体がその隙間を埋めるように活動していて,とても力を持っているなぁと感じました。
何となく,国も行政だけで何とかしようというよりも,民間と分担,協力しながら進めていこうというような印象を受けました。国が意図して取り組んでいる部分でも,結果的にそうなってしまったという部分でも,国が一元的に管理しない(できない)分,民間の機関が地域のニーズを組みながら取り組もうとすることができているようにも見えました。

個人的に最も興味があったのは,やはり施設です。
最近,タイでは児童保護法が制定,改訂されて,全国に4ヶ所,日本でいう情短施設,児童自立支援施設のようなところができたということでした。そこではインタビューをしながら,先方からもケースのことについての相談を受け,日本での支援の考え方についてお話をさせていただいたりもしました。
児童養護施設も訪ねました。児童養護施設には子どもの生活を支援することと,職業訓練,ソーシャルワークという大きく分けると3つの部門があるそうです。日本と同じように,少ない大人が子どもたちの生活を支えているようでした。心理職の方もいて,どんな仕事をしているのか尋ねると,主にはアセスメントをしているようで,セラピーの必要があるような子どもは情短施設のようなところか,病院を利用することになるということでした。アセスメントではIQ,EQのほかに自己効力感の検査を定期的にやっているよ,ということを教えてくれました。今回の研究のテーマは心理職や心理的なケアではなかったので,あまりたくさん聞けなかったのが残念ですが,また,今度はしっかりと聞きに行ってみたいなと思いました。

流れは違うとはいえ,同じ仏教の国。日本以上にタイのコミュニティはお寺を中心に作られている印象を受けました。人々の価値観の中にも仏教の思想が多く含まれています。街中ですれ違った人にでも手を合わせ挨拶をすると,丁寧に手を合わせて挨拶を返してくれます。バンコクは東京と同じような都会ですが,田舎に行けば行くほど,コミュニティの力は日本よりも強く残っていると感じました。児童保護においてもその力をうまく機能させようとしているようにも感じました。村のお寺の横には学校があり,広場がある。そしてその広場の周りには屋台がある。自然と人がつながっていく環境があるんだなと思いました。

日本もうかうかしていられません。日本なりの児童福祉のシステム,子どもの心理的な支援について考えなければいけないなと感じた旅でした。


日本でいう厚労省児童福祉局のような機関
タイ語は全く読めません…



タマサート大学社会福祉学部



ある施設の前に停めてあった日本の外務省が寄付した子どもを送迎するためのバス
(もっとちゃんとしたやつを送るように外務省に伝えたい)



情短施設のような施設で子どもたちが地域のおじいちゃんおばあちゃんから習って作った飾りをいただきました



広大な敷地の中にある児童養護施設