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ide LAB.

PCAGIPとIncident Process法(1)

2016.07.07 00:19

今回はちょっと論文調で…


学校現場などで活用されている事例検討にPCAGIPというものがあります。
これは村山が考案したもので,Person Centered Approachに基づいたGroupの考え方をマサチューセッツ工科大学のPigorsが考案したIncident Process法と統合して作り出したものです。

村山(2008)はPCAGIPに関する最初の論文で,忙しい学校現場では緻密な事例研究に基づいた事例検討をすることが困難なので,やり方を工夫する必要があるとしてPCAGIP法を開発することにしたとしています。
*村山は現在はPCAGIPとしていますが,当初はPCAGIP法としていました。「法」という言葉が抜けたのは単なる方法(型)としてではなく,そこに含まれるエッセンスに注目する必要があるという気持ちが含まれていると思います。

PCAGIPに関する研究は実践は年々重ねられていますが,研究の変遷については並木ら(2016)が『PCAGIP法研究の動向と課題』としてまとめているので,参照して下さい。
*PCAGIPではなく,PCAGIP法としているところが気になるところですが…

こうした中でずっと気になってきたのは,そもそも,もともとのPigorsが提唱したIncident Process法とPCAGIPの違いはなんだ?ということです。村山は当初,鵜飼美昭に刺激され,Incident ProcessとPerson Centered(Approach)Groupを組み合わせたと述べています。実際に,私が大学院生だったとき,その研修から戻ってきた村山先生が「今回は新しい事例研究の方法を勉強してきたよ」と言って,大学院の授業に一環としてその方法を体験しました。おそらくあの時がPCAGIPの最初の1回だったと思います。その時は当然,まだPCAGIPという名前もついていませんでした。
その後,PCAGIPを海外に紹介するHikasaらとの共著論文(2015)では,PCAGIPは

PCAGIP integrates Person-Centered Approach Group principles with the Incident Process method invented by Pigors (1980)

と紹介され,PogorsのIPを参考にしたことが示されています。
こうした中で,PigorsのIPとPCAGIPの相違点について議論した論文はありません。もちろん,村山らによる『新しい事例研究法 PCAGIP入門』等を読めばPCAGIPがどのようなところにそのオリジナリティを求めているのかを理解することはできますが,村山自身もPCAGIPとIPの相違点を明示してはいません。



PCAGIPを語る上では,IPとの違いやIPのどこを取り入れたかを明確にしておく必要があります。

次の記事ではそのことについて書いてみたいと思います。