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児童虐待とAD/HD

2017.01.06 01:01

手元に届いた"Child Abuse & Neglect"にAD/HDと児童虐待の関連を検討する論文が掲載されていました。
トルコで行われた研究ですが,100人ほどのAD/HDと診断された子どもと健常な子どもを比較し,AD/HDと診断されている子どもはどのような虐待を経験してきたのかを検討する研究です。
発達障害がある子どもは虐待を受けるリスクが高いということは常々言われてきましたが,AD/HDに限定して詳細なデータに触れるのは初めてでした。

"Effects of attention-deficit/hyperactivity disorder on child abuse and neglect"(2016) Gokten et al.

それによるとAD/HDと診断された子どもはそうでない子どもよりも身体的虐待(96.2%:46.2%),心理的虐待(87.5%:34.6%)を経験している一方で,心理的ネグレクトは統制群の子どもよりも経験していないことが示されています(5.8%:24.0%)。
また,DVの目撃者になる経験や性的虐待を受けた経験には統計的な差異は見られないようです。
ちょうど施設で暮らす子どもについて,発達障害や様々な生育上の経験が現在の暮らしやレジリエンスにどのように影響するのかについて調査をしているので,参考になるデータでした。
(それにしても虐待を経験している子どもの割合が多いな… 数字読み違えてるかも知れないのでよく読みなおしてみます)

身体的虐待は髪や耳を引っ張られたり,何かを投げつけられるなど広い意味での身体的暴力を含むもののようですが,AD/HDの子どもが身体的虐待を経験している割合は非常に高いですね。

一方で,"The ADHD Advantage: What You Thought Was a Diagnosis May Be Your Greatest Strength"(2015)Archerという本を読んでいました。AD/HDであることの強みについての本です。



冒頭で強調されているのは,AD/HDの子どもは幼少期に温かい養育を経験することができると,AD/HDならではの力を発揮することができるようになっていくということです。そういえば,知り合いの先生がご自身のことを「高機能AD/HD」とおっしゃっていました。AD/HDの特徴があるがゆえにいろいろなことに注意(興味)が向くけれど,注意(興味)が向いたことをちゃんとこなしていける,ということを言い表していたのだと思いますが,確かに,AD/HDの特性が強みになることもあると思います。
Attachmentの大切さはいろいろなところで強調されていますが,やはり幼少期に良い養育者-子どもの関係を築くことは大事なのですね。でも,AD/HDの子どもは虐待にさらされるリスクも高いので,幼少期の子どもに関わる人たちには子どもの特徴を理解する力やそうした理解をもとに養育者が子どもに良い養育を提供することができるようなサポートをすることができる力を身に着けてもらいたいと思います。