Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

ide LAB.

性別違和と性的虐待の関連

2018.04.04 23:09

興味深い論文を読みました。
GID(性同一性障害)学会が発行しているGID学会雑誌のvol.10(1)に掲載されている論文(症例研究)です。
テーマは「埼玉県の児童相談所における性同一性障害・性別違和と性的虐待の関連」というものです。

この論文では児童相談所のケースを分析する中で抽出された性別違和の訴えがあるケースを対象として分析が行われています。2391ケースのうち性別の違和感を訴えた症例が10ケースとされているのですが,そのすべてに性的虐待,あるいはその疑いがあるということが示されています。いくつかの症例については支援の経過が示されていて,(性的)虐待的環境から保護されたのちに性別の違和感が軽減したケースもあれば,継続しているケースもあるということが報告されています。

著者は虐待の影響やその後のケアが適切に行われないことによって,トラウマ性の症状が生じると共に,性別への混乱も生じたのではないかと考察しています。
私の経験的にもこの考察は「そうかもな」と思うところがあります。
性的虐待や性的被害が与えるダメージは,とても深刻です。身体的,心理的虐待が与えるダメージと性的虐待が与えるダメージを分けて考えることもあります(性的虐待独特の問題の深刻さがあるということ)。

性的虐待を経験した人は性別違和を感じるようになりやすいということは言えるのかもしれません。
ただ,性別違和,性同一性障害の人は皆,性的虐待,性的被害を経験しているということではないとも思います。

ちなみになんですが,性的被害を受けた子どもの治療についての良い本があります。
児童虐待を受けた子どもの心理療法についての本としては,1990年代にバイブルのようになった本を書かれたEliana Gilさんの本です。
残念ながら英語の本しかありませんが…
日本語で読みたいですよね?



Eliana Gil & Jennifer A. Shaw (2013) Working With Children With Sexual Behavior Problems