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源法律研修所

応接室

2020.04.13 11:29

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 昔の数寄屋造りの家には客間や控えの間があったし、明治以降の洋館には西洋風の応接間が設けられ、戦後、一億総中流社会と呼ばれるようになると、庶民の家にも応接間が設けられていたものだ。


 ところが、最近のほとんどの新築住宅は、応接間を設けていないらしい。応接間という言葉自体が死語になりつつあるそうだ。

 リビングは、家の主人や家族がくつろぐ居間だから、お客様にお見せするのは恥ずかしいし、公私の区別を付けるために、生活感のない応接間を設けて接客していたのだが、今では、来客があると、リビングに通すかららしい。

 昔と異なり、今はよっぽど親しい人しか家に上げないし、また、予算の関係上使用頻度が低い応接間を設ける余裕がないことが原因だそうだ。


 これに対して、応接室は、今なお健在だ。会社や役所には、必ず応接室が設けられている。応接室に通された際に、案内してくださった方から「どうぞこちらにお掛けになってお待ちください。」と言われた場合に、ソファに腰掛けて良いのかという質問を昔の教え子から受けたことがある。

 

 答えは、腰掛けてはならないだ。応接室にせよ応接間にせよ、主人から椅子を勧められるまでは着席してはならない。そのために、応接室や応接間には、絵画や美術品が飾られているのだ。自慢や見栄のために、絵画や美術品を飾っているわけではなく、主人が応対するまでの間、お客様の目を楽しませてお待ちいただくために飾っているのだから、立ったまま鑑賞しながら静かに待つのが正解だ。展示されている絵画や美術品で主人の教養、趣味・センス及び経済力が分かるし、展示されている絵画や美術品に関する気の利いた質問でも考えておくと、主人を喜ばすこともできてなお良い。

 新築住宅から応接間が消えるに伴って、このような常識を教えられる機会もなくなったからこそ、応接室に通された際に、立ったまま鑑賞していたら、その主人がそれなりの人物であれば、客人に一目置くことだろう。逆に、その主人がこのような常識を知らなければ、この客は何をボーッと突っ立っているのだろうかと思われるのがオチだが(苦笑)。