【前編】日本が世界に誇る“お香”文化を京都・長岡京から発信!香老舗 松栄堂 長岡京工場に大潜入♪
平安時代より、日本人はさまざまな暮らしのシーンに“香り”を取り入れ、日々、心豊かな生活を送れるようにと心がけてきました。いつの時代も人間は「安らぎ」を求めているんですね♪
SENSENAGAOKAKYOの大人の社会科見学シリーズ。今回ご紹介するのは、松栄堂の長岡京工場です。
松栄堂は京都に本社を構える創業300余年の香老舗。仏壇用のお線香から日用使いのインセンスまで、香百般を製造・販売しています。
松栄堂のお香は長岡京市の「ふるさと納税」返礼品としても大人気!もちろん、ウェブショップからも購入もできますよ~!!
前編では「工場見学」の見どころを、中編では「調合師」のお仕事密着、後編ではお香の基礎知識と、新しくOPENした小さな香りのミュージアム「薫習館(くんじゅうかん)」をご紹介します。
松栄堂長岡京工場の見どころを解説
見どころ① 工場見学の醍醐味!香りの不思議を体感
土地も広く交通の便もよいことから平成元年、長岡京市に工場が建設されました。
2006年より工場長を務める高宮音彦さんに工場を案内していただきました~。
キャプション)工場長の高宮音彦さん
―高宮工場長、工場に近づくにつれ香りがだんだん強くなってきますね。大迫力の香り!初めての体験です!!
高宮(以下同) これが工場の醍醐味なんです!はじめは強く感じるのですが、見学していただいているうちにだんだん慣れて安らぐとみなさんおっしゃってくださいます。
キャプション)天然香料として代表的な香木「沈香(じんこう)」。香木の中でも特に珍重されている。産出地はインドシナ半島やインドネシアなど
―確かに、もう心地よくなってきました~♪
そうでしょ?(嬉)こういった不思議な面も体感していただきたい。天然香料でしか作り出せない深みのある香りにこだわっていますからね。
1000種類以上ある松栄堂ならではの香りを生み出す生産拠点がここ長岡京工場なんです。
キャプション)写真はフジバカマ。2002年より希少植物の保護育成事業にも取り組み、環境に配慮したモノづくりを行っている(ISO14001の認証を取得)
―工場が竣工した平成元年以来、約30年間ずっと工場見学をされているそうですがどんな思いが?
多彩な工程を経てお香が製造されていく流れや、私たちがモットーとする安全・品質・環境への取り組みを知っていただきたいという思いと、今までお香が身近でなかった方に、魅力を感じてお使いいただくきっかけになればという思いがあります。
見どころ② 業界初!人間と「産業用ロボット」が支え合う伝統産業
キャプション)進物用線香の仕上げ工程(箱詰め)にロボットアーム及び検品システムを導入。繁忙期は最大8名の従業員で行っていた作業を1名で賄えるようになった。将来的には製造ラインの「全自動化」を目指す
―工場見学の新たなる見どころが「産業用ロボット」とおうかがいしました。
そうなんです!今年(2020年)2月から稼働しています。京都の伝統産業の製造現場、さらには薫香業界においても産業用ロボット導入は非常に珍しく、初の試みです。
―業界初のチャレンジとはすごい!最先端の工場ですね。なぜロボットを?
我々は京都の伝統産業を担っています。衰退させずいかにして未来により良い形で受け継いでいくか常に考えています。今は産業用ロボットと人間が共存してモノづくりすることにチャレンジ中です。
見どころ③ 300年にわたる創意工夫の歴史
―そもそも大量生産を目的に長岡京工場は作られたんですよね?
はい、そうです。松栄堂が長年にわたり培ってきたお香づくりの技術を機械化することで高品質・大量生産を目指していました。
しかし消費者ニーズの変化に伴って多品種・少量生産が求められる時代となり、大ロットの製造ラインと小ロットの製造ラインに分けることで対応しました。
キャプション)大ロット製造ラインの「成形」という工程。押し出し機から柔らかいお線香が出てくる。1メートルの長さにカットされ乾燥網につける ※見学時は上のフロアから見学
―具体的にどういったところが見どころになりますか?
基本工程となる混錬、成形、乾燥、切断、仕上げの各工程は大ロットでも小ロットでも、本社香房(※見学可能)での手作業であったとしても基本的には同じなんです。
―え!そうなんですか?
松栄堂のお香づくりの工程はその時々で最良の機械や道具を導入してきました。長岡京工場は先人たちと我々の創意工夫を積み重ねた歴史そのもの。ぜひ機械や道具にも注目して見比べてみてください。
キャプション)お線香は、小さな穴を開けた巣金(すがね)と呼ばれる金型に通して線状に押し出す。穴の大きさが変わっていないか使用する前に測る
工場長お気に入りの場所拝見♪
―そういえば、工場長のとっておきの場所があるそうで?
行ってみますか?屋上へご案内します。工場見学ではお連れできないのですが、私の秘密の場所です。
キャプション)ユニフォームのロゴはお香の煙がゆらぐ様をデザイン。2020年大河ドラマ『麒麟がくる』で注目されている天王山が眺望できる
―すごい!気持ちがいいですね。最高のロケーション!癒されますね。
工場の西側には天王山、北側には比叡山がそびえて、雄大な自然を感じられます。
さらに東側には京都競馬場。競馬場で行われる「京都芸術花火」はここからよく見えますから、従業員みんなで鑑賞会もしますよ。
キャプション)大ロット製造ライン。松栄堂の人気商品、渦巻型の「芳輪 堀川」を製造
キャプション)原料と水、色素を粘土状に練り上げた素材を機械で型抜きし、その後乾燥機へ ※見学時は上のフロアから見学
―確かに長岡京からも花火、見えますね。工場内の雰囲気づくりも大事にされているんですね。
そうですね。お客様に喜んでいただける商品を、自信をもってお届けするためにはいろいろと考えることがありますが、その中でも、みんなが安心して愛着を持って働いてもらうための環境づくりは最も重要です。
「大量生産でもお客様にとっては一つずつ」という従業員全員の気持ちあってこそ良い商品ができると信じています。
キャプション)乾燥したお線香は切断機で製品規格に合わせてカット。2名体制で品質チェック
キャプション)裁断機からまっすぐ美しいお線香が次々に出てくる。まっすぐなお線香をつくるには混錬工程がとても重要 ※見学時は上のフロアから見学
キャプション)135mmにカットされたお線香。燃焼時間は約30分。般若心経を読み終わる頃にちょうど燃え尽きるよう設計されている
―そんな工場長の原動力ってなんですか?
若い社員たちが次々に仕事を任されるようになり、成長していく姿を見ることにやりがいと喜びを感じます。工場長としての業務を通じて、自分も一緒に成長させてもらっていますね。
キャプション)右が松栄堂企画事業部部長の辻光一郎さん、左が工場長の高宮音彦さん。二人はかつての上司部下の関係だそう
―本日、取材に同行してくださっている企画事業部部長の辻さんも工場にある生産部門の仕事の経験があるそうですね?
辻 はい。入社後は全員、生産部門で研修を受け、現場で一からお香について勉強するんですよ。工場も本社香房も社員自身がご案内しています。
基本的な説明6~7割と、あとはお客様のご興味に合わせて。会話を楽しみながらご案内するように心がけています。
キャプション)松栄堂の商品アイテム数は2000~3000。人気定番商品をセレクトして工場内で販売。あらかじめ電話予約すればこちらの商品は購入可
―それも工場見学が人気の秘密なのかもしれませんね。
辻 先日、すごく嬉しいことがありまして。新卒採用試験を受けにきた学生さんが、小学生の時に見学に来た思い出を交えて志望動機を語ってくれました。さかのぼって計算すると、ちょうど私も工場見学の案内をしていた頃なんですよ。(笑)
工場見学の印象が良かったから、入社したいと思ってくれたのかも。そう思うとすごくやりがいを感じますね。
―とても素敵なエピソードですね♡大人から子どもまで楽しめる工場見学ということがよくわかりました!ありがとうございました。
キャプション)工場入口、麒麟の香時計。こんなところに麒麟がいた!!撮影スポットになりそうな予感♡
中編では工場に勤務する「調合師」さんのお仕事に密着。こちらもお楽しみに!
松栄堂のお香はお取り寄せ(ウェブショッピング)で楽しむこともできます。お家で過ごすことの増えるこれからの時期、香りで癒されてみてはいかがでしょうか?
また、松栄堂のお香は「ふるさと納税」の返礼品としても大人気!お申し込みはコチラから!
■■INFORMATION■■
香老舗 松栄堂 長岡京工場
長岡京市勝竜寺東落辺14-2
075-212-5591
※工場見学は無料。所要時間は約60分。5名~、1週間前までに要予約
※京都本社香房は1週間前までに要予約
※新型コロナウイルスの感染拡大の状況により、工場見学が中止となる場合もあります。電話にてお問合せください
・ウェブショッピング
・ふるさと納税
撮影:菊地佳那