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体験しないとわからないこと

2017.10.09 15:15

有限会社アーバン・ファクトリー

藤江 創


「夏すずしく、冬あたたかい住宅にしてください」

住宅の相談を受けていると、必ずといってよいくらい、この要望がでてきます。でもこれって、すごくあいまいな表現ですよね。どんな条件だと自分がすずしく感じ、どんな条件だと自分があたたかく感じるかは、他人にはうかがい知れません。実際に自分の家を建てることを決めたとき、このことをつっこんで考えていたかどうかで、その家での生活は大きく変わってくるはずです。

住宅の中で感じる、すずしさや、あたたかさのことを、建築の専門用語では「住まいの温熱環境」といいます。温熱環境とは、ただ単にその場所の気温だけできまりません。大きく6つの要素で決まるのですが、それを説明すると長くなるので、ここでは割愛します。その代わり、わたくしがかかわっているプロジェクトでこのことをわかり易く紹介しているホームページがあるので、そのアドレスを最後に紹介しますね。さて、この温熱環境ですが、伝えるのが非常に難しい。なにしろ、見えないし、臭わないし、聞こえない。温熱環境は体全体でしか感じられません。つまり、その場にいないと体感することができないのです。

では、この温熱環境のことを理解し、将来の住まいに活かすにはどうすればよいのでしょう。ここではその手順を教えます。

まず初めにすること。それは、現在の自分の居場所の温熱環境がどのような状態にあるかの確認です。自宅の寝室はもちろん、住宅内の長くいる場所、働いている人はその作業スペースなど。とにかく普段過ごしている温熱環境を一つの軸として決めてしまうわけです。

次にすること。軸とした温熱環境よりも快適と思える場所の捜索です。行きつけのカフェだったり、よく泊まるホテルだったり、お友達の家のリビングだったり、、、。快適だなと思える温熱環境に出会う機会は以外と多いと思います。そういった場所に出会ったら、できるだけ長時間、その場所にい続けてください。1時間以上たっても、そこにい続けたいなぁと思えたなら、そこはあなたにとって快適な温熱環境といえます。

最後にすること。もうお分かりだと思いますが、快適と思った場所の温熱環境がどのような状態にあるかの確認です。

文章にするとたった3段階、簡単そうに感じますよね。ところがそうは問屋がおろしません。先ほど、温熱環境の要素が6つあると書きました。それぞれの要素は、測定方法も違えば、それに使用する測定器具も違います。情熱があれば、自宅の温熱環境は測定できますが、快適と思えた場所が、他人の所有する場所だったりすると、測定させてもらえないことのほうが多いはずです。てことは、温熱環境を理解することはできないってことじゃん。そんな声が聞こえてきそうですが、ご安心ください。最近は温熱環境を体感したり、学べたりできる施設が、たくさん作られています。中には、高気密高断熱住宅の宿泊体験ができるなんてところもあります。住宅を建てるのはまだまだ先という方も、こうした施設を利用して、自分の快適な温熱環境を把握しておくとよいと思いますよ。

最後に私が係わっている、「あたたか族」のホームページを紹介します。温熱環境のことが、事例などを通して分かりやすく紹介されています。ちなみに、ここに掲載されている、ネオマワールド快適空間ラボラトリーの展示棟は当社で設計させていただいたものです。

http://www.atatakazoku.com/

ネオマワールド快適空間ラボラトリー全景
展示棟内観

※写真提供:快適空間研究所