#和田秀樹 「外出自粛全てに優先」信じたらダメ
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和田秀樹 国際医療福祉大学大学院教授
アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した「和田秀樹 こころと体のクリニック」院長。1960年6月7日生まれ。東京大学医学部卒業。『受験は要領』(現在はPHPで文庫化)や『公立・私立中堅校から東大に入る本』(大和書房)ほか著書多数。
「外出自粛はすべてに優先する」という専門家を信じてはいけない
死亡原因は「重い肺炎」だけではない
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、外出自粛の呼びかけが広がっている。
精神科医の和田秀樹氏は
「そうした見解は、政府の専門家会議を根拠にしているが、メンバーのほとんどが感染症の専門家で、他分野の声が届きづらい。
感染拡大防止だけを目的にすると、経済苦による自殺などを見落としてしまう。
もう少し冷静な対応が必要ではないか」という——。
コロナ対策を指揮する安倍首相を感染症専門家の「言いなり」か
新型コロナウイルスにまつわるパニックのような状態が世界中に広がっている。
現状、日本は欧州などに比べれば感染者数も死者数も少ない。
その意味で、政府や国民の「慌て方」はいかがなものかと記事で述べた。
感染爆発するかどうかの重大局面であることは承知しているが、やはりもう少し冷静な対応が必要ではないか。
安倍政権の対応を見ていて、もう1点、首をかしげたくなることがある。それは特定分野の専門家の意見に従いすぎていないかということだ。
現在、政府が国民に休校や自粛を呼びかける際に、おおむね新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の提言に従っていると言っていいだろう。
座長の脇田隆字氏は国立感染症研究所の所長、副座長の尾身茂氏は世界保健機関(WHO)の感染症対策部長を歴任した感染症の大御所だ。
そのほか、日本医師会の常任理事や大学の呼吸器内科の教授、弁護士なども入っているが、ほとんどが感染症の専門家である。
彼らが担当することに異論があるというわけではない。
ただ注意が必要なのは、「医学」においてはある専門分野の人が勧める治療などが、ほかの医療の専門分野については逆効果となることが少なくないということだ。
感染症の専門家の意見だけを聞いていればいいのか
新型コロナから話はそれるが、たとえば、「善玉・悪玉コレステロール」だ。あまり正しく認知されていないが、これは体にとって善玉か悪玉かという分類ではない。
動脈硬化の研究者や循環器内科の医師にとっての善玉・悪玉ということである。要するに善玉コレステロールの値が高ければ動脈硬化になりにくく、悪玉コレステロールの値が高いと動脈硬化になりやすい。
しかし、同じ医学であっても、循環器系とは異なるジャンルの免疫学者に言わせるとコレステロール値が高い人ほど免疫機能が高いということになる。
つまり、がんや感染症になりにくくなる。
新型コロナについても該当する可能性がある。おまけに皮肉なのは、悪玉と言われているコレステロールのほうがむしろ免疫機能を高めるとされていることだ。
ホルモン医学の世界では、コレステロールがさまざまなホルモンの材料になるとされている。
特に男性ホルモンをつくる主な材料は悪玉コレステロールである。
男性ホルモンの値が低下すると性欲や意欲が低下するだけでなく、筋肉がつきにくくなり、記憶力も落ち、また人付き合いもおっくうになることが知られている。
薬でコレステロール値を下げるとED(勃起障害)になるというのもよく聞く話だ。
つまり、悪玉を含むコレステロールが少ないとさまざまな弊害が起こるのだ。
ある分野の「常識」は別の分野の「非常識」
わたしの守備範囲である精神科の領域でもコレステロール値が高いほうがうつ病になりにくいことが知られている。
これも悪玉のほうがいいとされている。
ついでにいうと、コレステロール値はやや高めの人が、いちばん死亡率が低いこともわかっている。
要するに、善玉コレステロール、悪玉コレステロールというのは動脈硬化についてのみ通じる話で、身体全体について言える話でない。
にもかかわらず、コレステロールについて論じられる際に、ほとんどが循環器内科や動脈硬化の専門家の意見ばかりが取り上げられ、コレステロールが多いのはよくない、
悪玉は特によくないという考え方が定着してしまった。
これと似たようなことが今回の新型コロナ騒動でも起こっているのではないだろうか。