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ff(フォルティッシモ)

ST010:仲間割れ

2019.08.11 13:00

唯による作曲がついに完了し、綾たちはいよいよ本格的なダンスの練習を開始することに。そんな彼女たちを見ながら、こころは自分も仲間に加わりたいという思いを募らせるも、それを打ち明けられずにいた。



 こころ監督によるダンス練習、そして綾の個人レッスンの成果は、すぐに出てきた。しかし時の流れは速く、本格的な練習が始まって2週間が経とうとしていた。そんなある日のこと。


「ねえ、綾!」


 珍しく、こころが綾に怒声を放っていた。


「いつになったら歌詞が書けるの?」

「それは…」

「本番まで、あと1週間なんだよ?!」

「分かってるよ」

「呆れた…。私、もう知らないから」


 そう言って、こころは屋上を後にした。その場に残された綾と麻央、唯の三人の間に張り詰めた空気が漂う。

 しかし、こころが怒るのも無理はなかった。そのため、麻央も唯も、綾に声を掛けることができずにいた。


「あのさ」


 呟くように、綾が言う。


「今日、これから時間ある?」


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ダンスの練習を終え、三人はいつものファミレスに集まっていた。


「ごめんね、私のせいで」

「いえ…」


 麻央も唯も、綾に何と返せばいいのか分からなかった。


「実はさ」

「?」

「できてるんだ、歌詞」

「え…?」


 綾の言葉に、麻央と唯はお互いの顔を見合わせた。「歌詞ができてる」…?

 二人の戸惑いを他所に、綾は鞄の中から一枚の紙を取り出した。麻央と唯は、思わずそれを覗き込む。


「どう、かな?」


 しばらくの沈黙の後、綾が恐る恐るそう尋ねた。


「これ……」

「めちゃくちゃいいですよ! これ!」


 麻央と唯はそう声を上げる。二人の強い眼差しに、綾の表情は和らいだ。


「綾さん」

「…なに?」

「この曲、私たち三人で完成させましょう!」