機械設備の価値。
以前取引先の工場に伺って経営者の方と雑談してた時に、僕のふとした発言から機械設備の資産価値について色々と考察を伺った。
その中でも一番衝撃的だった言葉は「あんなもんは、ただの鉄屑ですわ」だった。どうして加工費という利益を産んでくれる機械に対してそんな言葉がかけられるのだろうと、僕は不思議だった。
経年劣化していくものなので、現物の価値というのは年々減少していく。これは自動車とかと全く同じで、新機種も出るから、その物自体の価値というのは、当然といえば当然だが、下がる。下がるんだけど、使い方によっては価値をどんどんと生み出してくれる。もちろんメンテナンスしなければどんどん状態は悪くなる。が、きちんと手入れをしていれば、しっかりと利益を出す原動力となる。なぜただの鉄屑なのか。
今の状況なら、彼の言葉もなんとなくわかる。
市場がなければ、稼働できない。そういうことだ。動けない機械はタダの鉄屑だ。
飛べねぇ豚はただの豚だ。マルコもそう言ってたな。
今日、そんな工場の社長から電話もらって、五月の仕事が全くないという報告を受けた。現状で渡せる案件はほとんどない。これは非常に申し訳ない気持ちになった。秋冬展示会の量産オーダーが入ってきてはいる。が、見本時期から関わってもらっていなければ、基本的には見本発注した先に量産を入れるのが筋なので、途中で浮気はできない。事情が事情でも、それをやっちまったら見本やってくれた工場にも申し訳がたたねぇ。関係性を保つ基本だ。あけない夜はないが、夜があける前にいなくなっちゃったら、それこそ機械設備なんてタダの鉄屑になってしまう。売れる先なんてアテがほとんどないから、資産を差し押さえにくる連中だって見向きもしないだろう。
そう、リセールバリューってやつがほとんどないのが専用工業機械の辛いところだ。
こういう状況になって、より一層製造工業関係各社は今後の運営方法の見直しを問われるだろう。金の卵をうむ鶏にできるか、タダの鉄屑にしてしまうか、機械設備の価値を高めることができるかどうかは経営者の手腕が問われるところだと痛感した日であった。